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第36回「You Really Got Me大特集」(2)

 この曲はデビューアルバムKINKS7曲目に収められましたが、アルバムを通して聴くとこの曲だけが異質。優れているとかどうとかではなく、異質。アルバムはChuck Berryの「Beautiful Delilah」(やんちゃなヴォーカルと無茶なギターソロを繰り出すデイヴ大目立ちの一曲)を始め、「Long Tall Shorty」、「I’m A Lover Not A Fighter」、Bo DiddleyCadillac」、またChuckの「Too Much Monkey Business」等々といったR&B系のカヴァー曲が約半分、レイ自身の作曲したORプロデューサーの提供した「オリジナルソング」が約半分なんですが、前回列挙したような特徴を備えた曲は他にありません。(むしろそのスタイルは、続くシングル「All Day and All of the Night」などで踏襲されます。)
 
 なお、The KinksのメンバーはRay DaviesVo, Gt)・Dave DaviesGt, Vo)・Pete QuaifeBa)・Mick AvoryDr)ですが、「You Really Got Me」を含む数曲ではBobby Grahamというドラマーがセッション参加しています。レイによれば、バンド草創期における契約のアレコレのためにMickの参加がみとめられる前だったとのことですが、「でも僕らはミックをスタジオにコッソリ呼んで、タンバリンだけだけど参加してもらったんだ」。確かにタンバリンの音入ってますね。
 
 この曲にはいろいろ逸話がありますが、その一つが「再録音」したという話。
 「ヒットレコードを作ると心に決めていたタルミーは、エコーとオーヴァーダブを多用した入念なレコーディングをしていた。キンクスは、これほどのゴテゴテにしなくても、薄っぺらなライヴ・ヴァージョンでも興奮は十分伝わると反論した。ところが、きちんと手を加えたヴァージョンをリリースしたがったレコード会社は、グループの考えに反対、このままではまずいと感じたレイは、キンクスの新しいサウンドの特長でもあるライヴ感覚を残したまま、この曲を再レコーディングしたいと言い張った。」【ジョニー・ローガン著『ザ・キンクス ひねくれ者たちの肖像』、69頁】
 
 当時としては過激な――少なくともポップスとして売れ線とは思われない――雰囲気の曲だったことは想像されますが、案の定レコード会社が反対したと。でも、すでにライヴで披露していてオーディエンスの反応が良いことを知っているレイたちは、反発しまして、シェル・タルミー(プロデューサー)が制作したのとは別のヴァージョンづくりを主張しました。当時のマネージャーらがバンド側について、資金も用意し、レイの仕切りで再録音されたのが、現在誰もが知るあのヴァージョンだというのです。
 
 一枚目のシングル「Long Tall Sally」、二枚目の「You Still Want Me」もさしてヒットしなかった新進バンド。(確かに「Long Tall Sally」は変なヴァージョンですがね。オリジナルはおろか、Little Richard命のPaul McCartneyが熱唱を披露したThe Beatlesヴァージョンにすら及ばない牧歌的な出来。リズムパターンが「Lucille」っぽくなっているのがちょいとおもしろいくらい。一方の「You Still Want Me」は、ポップソングとしてはまあまあですが、突出したところも無し。)ここでしくじったらもう終わりだ……そういう緊張感はバンド(少なくともレイ)にはありました。後年、
 
 「あの録音をはじめたとき、4人が4人とも興奮していた。演奏しているデイヴの横に立っているのはすごい経験だった。思う存分やってほしいと思い、ぼくは彼に向かって叫び、最後のチャンスだぞってはっぱをかけた。あのレコードには決意と戦いとガッツが入っている。……」【ジョニー・ローガン著『ザ・キンクス ひねくれ者たちの肖像』、70-71頁。1971年のレイ・デイヴィスのインタビューより】
と回想している通りです。
 
 それで出来上がったあの殺気立ったヴァージョンは、ポップスではなくロックの歴史を切り拓くことになったわけでした。この曲に出くわしていなかったらたぶん私もロックがどうだとかどっぷりはまることはなかったでしょうから、個人史的にもありがたくも罪深い一曲であります。
 
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 ちなみに、現在出ている2CDデラックス・ヴァージョンKINKS一枚目には「オリジナル・ステレオ・アルバム」+ボーナス曲、二枚目には「オリジナル・モノラル・アルバム」+ボーナス曲が収められていますが、「You Really Got Me」もニュアンスがちょっと違います。一枚目の方7曲目には「You Really Got MeMono LP Version with Reverb)」というのが入っていますが、クレジット通りこれはステレオというより「リバーブ」がかなり深めにかかったヴァージョン。最初の「ごががごが」が、「ごががごがっっ」くらいになっていますほか、歌も浴場で響いてるみたいになってます。現在割と多くのベスト盤に入ってるのはこっちではないかと。私がむかあし買った初めてのキンクスCDTHE BEST AND KOLLEKTABLE KINKSという編集盤もこれでした。
 
 一方、二枚目の方に入ってるヴァージョンは、おそらくこっちが本来のモノ録音じゃないかと思うのですが、それが無い。最初のリフからして、目の前で「エフェクターも無しに歪ませた音を腕力で叩きつける」みたいに感じられる。……ので、私はこちらの方がずっと好きですね。デイヴの渾身ギター・ソロもクリアに聴こえるし。皆様にもおすすめしたい。
<続く>