DON'T PASS MUSIC BY

"Fashist an di attack ,den wi countah-attack......"<Linton Kwesi Johnson>

第36回「You Really Got Me大特集」(1)

当ブログ開設一周年を記念(?)しまして、またしても特集をお届けします。
 
 ロックの歴史上重要な名曲というのは数々存在しておりますが、私が思うにその一つに挙げられるべきものとしてThe KinksYou Really Got Me」があります。今回はオリジナルからライヴ、カヴァーから珍品まで、この曲「のみ」をひたすらご紹介しようという趣向で。(この一曲の為にCDを買うというのは……という方も多いでしょうが、今は便利な世の中。動画共有サイト等で試聴できたりするものも多いので、それらでテイスティングなさっては如何。)
 ちなみに私個人とこの曲との縁については当ブログ「第23回「Van Halen」(3) 」に記してございますので、お暇な方はどうぞご覧下さい。
 
Ⅰ<オリジナル>
1The KinksKINKS1964)版
The KinksKINKS1964
 1. Beautiful Delilah
  2.So Mystifying
  3.Just Can’t Go To Sleep
  4.Long Tall Shorty
  5.I Took My Baby Home
  6. I’m A Lover Not A Fighter
  7.You Really Got Me
  8.Cadillac
  9.Bald Headed Woman
  10.Revenge
  11.Too Much Monkey Business
  12.I’ve Been Driving On Bald Mountain
  13.Stop Your Sobbing
 
  14.Got Love If You Want It
 
 Ray Davies作詞作曲の「You Really Got Me」は、1964年リリースのThe Kinks三枚目のシングルでした。(一枚目はLittle Richardのカヴァー「Long Tall Sally」、二枚目はRayのオリジナル「You Still Want Me」)。デビューアルバムでは7曲目に収められています。
 この曲のでき方や録音をめぐるエピソードについては少し後回しにして、まず聴いてみましょう。
 
イメージ 1

 

 皆さんご存知「ごががごが」のリフで幕を開ける、たった210秒のシンプルな曲ですが(ロック史の進んだ)後から振り返ると、たいへんにエポックメイキングな楽曲だったことがわかります。
 
①冒頭の強烈なギターリフ。パワーコードだけで全編引っ張るような曲は以前にはほぼなかったもの。ちなみに、よく聴くとフレットノイズまでちゃんと(?)入っていまして、実に生々しい。当時は専用のエフェクターなどありませんでしたから、この「歪んだ音」を得るのに彼らは苦心しました。
 「エルピコ製の10ワットのアンプの薄っぺらな音にいいかげんうんざりしていたデイヴは、イライラが頂点に達して編み棒でアンプのスピーカーに穴を開けてしまった。大音量で演奏していたデイヴは、歪んだサウンドに驚いた。」【ジョニー・ローガン著『ザ・キンクス ひねくれ者たちの肖像』(野間けい子訳)大栄出版1995年、68頁】
 
②ベースがギターリフとユニゾンで貫徹。ブルーズやカントリーといったロックンロールのルーツとなった音楽ではあまり見られない様式では。というのも、これは非常に単調に聴こえる恐れもあるからでしょうね。オリジナルベーシストのPete Quaifeは、その後何度もライヴでやる羽目になり(ヒット曲だから当然ですが)、うんざりしていた……という説を何かで読んだ記憶があります。この手法を(たくまずして)導入して成功したのが例えばSex Pistolsの「God Save The Queen」でしょう。録音時ベースを弾いたSteve Jonesが自分のギターリフと同じラインを弾いたために物凄い厚みが出ています。
 
③ドラムまでもが、ギターリフと呼応したパターンを繰り返す。キックの位置が重要なんですが、これを揃えると全パートの一体感が物凄いことになるのですね。あとでたくさんご紹介しますが、各種カヴァーヴァージョンはここを変えてしまっているものが多く、個人的には物足りない。
 
④相次ぐ転調。パターンが単純な分、実は転調が多いのがこの曲。それによってコーラス部分へ向けてのテンションを高めています。
 
⑤コーラス後のブレイク。勿体ぶってからのギター・ソロ、というのはいまでは珍しくも何ともありませんが。(実はここにも逸話がありましてね。後程。)
 
⑥直情的なようで実は斜に構えた歌詞の世界。これもRayのこだわり。
 「<ユー・リアリー・ガット・ミー>は、月や6月なんて言葉が出てこない泥臭いラヴソングだ。つまらないって思った人が多かったけど、本当はみんなこんな風に感じてるのさ。ファンだって同じように感じてると思う。ティーンエイジャーは決して、「愛してるよ」なんて言わない。彼らは自分たちの思いをセンチメンタルじゃない方法で伝えたいんだ。」【ジョニー・ローガン著『ザ・キンクス ひねくれ者たちの肖像』、75頁。レイのコメントより】
<続く>