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"Fashist an di attack ,den wi countah-attack......"<Linton Kwesi Johnson>

第35回「Explosicum(爆漿楽隊)」(3)

 爆漿楽隊は珍しく南昌出身だと申しましたが、南昌のバンドが聴けるメタル・コンピがあります。SO ROCK(我愛揺滾楽)』という雑誌が附録につけているオムニバスCDからセレクトした編集盤。(ちなみに、私は持っていませんが、「精選集1」はSO BALLADS!だそうです。)デモレベル音源のため、音質はそれなり。
 
1Various ArtistsSO METAL!SO ROCK!精選集2)』2004
1.雷神「悪毒」
2.軍械所「覚醒」
3.異端「復活」
4.手術台狂人日記
5.腐屍「残害」
6.陳屍墓誌銘」
7.凡言Fuck the More
8.Pride
9.噬菌「種」
10.烈痕「絞刑之夜」
11.血祭的亡魂「血祭」
12.異端「毀滅中拯救」
 
イメージ 1

 

 ブックレットによれば、1-3曲目は「Power/Thrash Metal」、4-6曲目は「Death/Brutal Metal」、7-9曲目は「Industrial Metal」、10-12曲目は「Black/Gothic Metal」だそうです。注目バンドは「異端」と「手術台」、あと「軍械所」ですかね。

 

 異端楽隊(Heresyは南昌が誇る(?)デス/ブラック・メタルバンド。「復活」はファーストアルバム『賛美詩』2000)に入っていた曲。楊立(Vo, Ba)の咆哮ヴォイスが禍々しい。12曲目の「毀滅中拯救」はセカンドアルバム『濃霧鎮』2003)に収録の曲で、こちらはシンフォ・ブラック色が濃厚。楊立はヴォーカルに専念し、「悪毒」なるベーシストが加入しています。この悪毒こそ、誰あろうのちの爆漿楽隊のギタリスト邱剣化なのである。(実は、異端は両アルバムとも持っていたりする。あとで『濃霧鎮』の方をメインにご紹介しましょう。)

※☟こちらはオマケ(『賛美詩』の曲」

youtu.be

 

 そして、異端楽隊の楊立がサポート参加もしたもう一つの南昌バンドが手術台楽隊4曲目「狂人日記」は、歌詞カードを見るに魯迅の小説を踏まえています。というか、ほとんどそのままのような。「人を喰ったことのない子どもが、あるいはいるかもしれぬ。子どもは救って……」って、いいのかコレ。ヴォーカルはDesecrationこと李俊超、ドラムはZooparasiteこと鍾然。さらに邱剣化や譚冲が相次いで加入……って、爆漿楽隊を結成する面々ですな。前身、というには音楽性が違いますが。南昌メタル人脈恐るべし……というよりメタル人口(プレイヤーレベルで)が少ないのかな。

 

 軍械所は南昌ではなく、内モンゴルで結成されたグループ。なんで取り上げるかというと、彼らのアルバムも私は持ってるから、というだけ。『闘争』2005年)は結構クオリティの高いアルバムで、このコンピにある「覚醒」も録り直されてちゃんとした音質になってます。バンドの発起人であるギタリスト劉立新のギターはなかなかのものですし、ヴォーカル応鵬のパワーもなかなか。「Pantera偏愛」が露骨すぎるのが気にならなければ、楽しめましょう。アルバム『闘争』の「革命」とか「燃焼的烈火」とか、まんまパンテラ……。ちなみに、コンピ版「覚醒」は、ベースとドラムがファーストとは別の人ね。

 

 それ以外のトラックはどうかというと。雷神楽隊「悪毒」は、歌詞がむしろパンク・ハードコアっぽい、(若干)グルーヴィソング。腐屍楽隊「残害」、陳屍楽隊墓誌銘」はいわゆるデスメタル……って、あれですな。デスメタル的なバンド名や曲名って「漢字」で表記するとすごく強烈ですな。インダストリアルは私の守備範囲外なんで、よくわかんないんだけど、凡言(and)冥楽隊Fuck the More」は全編英語詞の妙にダンサブルなやつ、チープで籠った音質に語り調のヴォーカルがのるPride」はむしろテクノでしょうか。噬菌楽隊は「中国のSlipknot」と呼ばれたことがあるそうな。烈痕楽隊「絞刑之夜」はキーボードがまぶされた長尺(835秒ある)ブラック風味。血祭的亡魂「血祭」もまあシンフォブラック(このスタイルが近年割とよくあるのだ、中国産で)。

 

 ウェブサイトChinese Rock Databaseで調べさせてもらうと、たいがいのバンドはもう活動できていないですね。オリジナルアルバムを作るところまでいったのはごく一部、まして南昌の一派のように連綿と動き続けているのはかなりレアケースではないかと。頑張ってる。
<続く>