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"Fashist an di attack ,den wi countah-attack......"<Linton Kwesi Johnson>

第35回「Explosicum(爆漿楽隊)」(2)

ExplosicumCONFLICT爆漿楽隊『衝突』2008
1.死亡的路上(On the road of Death)
2.Conflict(衝突)
3.屠夫生涯(Slaaaaaayer!!!)
4.大屠殺(Holocaust)
5.風暴(Storm)
6.解救我(Rescue Me)
7.開火(Fire Fire)
8.塌陥(Collapse)
9.戦闘(Keep Fighting)
メンバー
 邱剣化(Gt
 曽凱鋒(Gt
 李俊超(Vo
 譚冲(Ba
 鍾然(Dr
 
イメージ 1

youtu.be

 アルバムCONFLICTは、バイクの効果音SEから始まる「死亡的路上」がオープニング。猪突猛進型のスラッシュ曲……ながら、途中でリズム・パターンを変化させたりして頑張ってます。ハイトーンというよりも上ずった調子で突っ走るヴォーカル(終盤の「就在此刻現在/向前、向前/破壊秩序規則/瓦解、瓦解/瘋狂衝刺争奪/拼搶、拼搶/品嘗最後的晩宴/死亡、死亡」というところのテンションはなかなか)。頻繁にタムを回して煽るドラム。リフまたリフ、キメにツインと変幻自在のギター。この一曲で、彼らがどういうことをやりたいのかすぐわかりますね。
 
 すぐさま次の「Conflict」が始まりますが、タイトルトラックとなっているだけあって、気合いは前曲以上。Aメロのインテンスさは相当なものですし、珍しくコーラスが英語(“Conflict,nation to nation. Conflict, race to race. Conflict, human to human. Conflict,blood to blood.”)なのもここでは雰囲気にあってますね。ギターソロの一部をゲストの李寒冬(黒塚楽隊@江西省)が担当。
 
 3曲目は英語副題を観るとわかっちゃい(わらっちゃい)ますが、Slayer讃歌。歌詞カードにも“This song is dedicated to Slayer.”とちゃんと書いてあります。字余りみたいな歌詞を詰め込んで歌うのも「らしい」ところ。この辺に来ると、歌がリズムにフィットしきれていないとか、ドラムがところどころ不安定だとか、ギターソロがtoo スリリング(危なっかしい)だとかいうことは、さほど気にならなくなりますな。打ち込みとか、録音後の修正とかを行っていないということがわかるという点では却って好感が持てるくらいで。
 
 4曲目にしてヘヴィなミドルテンポの曲か?と思わせるイントロが鳴りますが、1分あたりのところからやっぱり暴走。リズムの表裏があやしくなってくるのもお約束。
 
 次の曲「風暴」も疾走曲ですが、比較的シンプルな構成のためか、演奏の安定感は高め。お、この曲の歌詞カードのところをみていたらヴォーカルの李氏の写真がありましたが……MotörheadTシャツを着ていますな。うむうむ。
 
 ベースソロにドラムが加わって始まる6曲目は、本作中最長(526秒)のナンバー。コーラスの“解救我、無辜的我/解救我、不安的我/解救我、無法逃脱/解救我、製造更多罪悪……”っていうところがキャッチー(?)。どの曲もそうですが、ライヴで演ったら客をよく乗せられそうだなあ。
 
 短いドラムのフィルからの(やっぱり)7曲目「開火」は、上ずり気味のヴォーカルが本領発揮。不安定といえば不安定なんでしょうが、この爆走曲は異様なテンションで乗り切るしかない。
 
 珍しくギターのアルペジオでダークに始まる8曲目は本作では唯一のシャッフル調。不安定なところはやはりありますが、ツインギターが揃いのフレーズをキメたりするところはなかなか。310秒辺りからリズム・パターンを変えて高速8ビート疾走になったかと思うと、340秒過ぎではテンポを落とし、410秒でまた元のシャッフルに回帰。意欲作、ですかな。
 
 ラスト「戦闘」も連中らしさ満載の疾走ナンバー。途中(230秒過ぎから)ヘヴィシャッフルの合唱的コーラスパートになって、そこから(唐突に)元の暴走ビートに戻る、っていうのを繰り返した挙句ジャーンと終わってしまう。
 
 痛快なまでの“メタル・ばか”っ振りが最高な一枚でしたね。この作品は、私が一時北京に滞在しておりました際、見つけて通っていた中国唯一のヘヴィメタル専門店ですすめられて買いました(2009年)。そのお店の店長さんや店員さんは親切な方々で、「中国産のヘヴィメタルを聴きたい」という要望を伝えたらいろいろ教えてくれたのですが、そのうちの一つがこれでした。「北京以外のバンドは珍しいんだよ」といいながら試聴させてくれまして、そのオールド・スラッシャー風格にこちらが参ってしまった、というところ。(その他の収穫物についても、おいおいご紹介のつもりです。中国のメタル・シーンは着実に動いておりますよ。)
 
 ちなみに彼らはその後もアルバムRAGING LIVING2014)、LIVING'S DEAL2017)を制作、2015年には来日もしていたようです。(……知りませんでした。)ヴォーカルとドラムはメンバーチェンジがあったようで、作品のテイストは若干変わったみたいですね。
<続く!>