DON'T PASS MUSIC BY

"But holy men and kings would die in the year Twenty Twenty-five......"<Satan>

第33回「ライヴ好演集」(3)

 プログレッシヴ・ロックのライヴというと「スタジオ版の精緻な再現」が売りだったりすることも多いですが、ここではちょっと変わった楽しみ方の出来るものを。
 
7King Crimson21st Century Schizoid Man」(EARTHBOUND1972
 演者:Robert FrippGt)・Boz BurrellBa, Vo)・Mel CollinsSax)・Ian WallaceDr)・Pete SinfieldSound Engineer
 
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 King Crimsonのライヴ・アルバム。今では山ほどリリースがありまして、各時代――このバンドはメンバーチェンジが非常に激しく、時期・ラインナップによって風格が異なる――のライヴをそれぞれ楽しめるのですが、70年代当時は発表された実況盤はすくのう御座いました。その数少ないリアルタイムのライヴ・アルバムの一つがこのEARTHBOUND
 
 このバンドの歴史を語ろうと思ったらもうそれこそ大変です――もっとも、専門とされているサイトがいくつかありますのでそちらをご覧になれば早い――が、いくつか注記。まず、本作制作時に件の「21st Century Schizoid Man」を世に送り出したメンバーは過半が抜けており、Fripp/Sinfieldしか居なかったということ。それから、録音状況がよくなかったため音質ははっきり言って良くないということ。(極悪なオーディエンス録音というわけではないのですが。)セットリストも、わかりやすく名曲集ではないということ。こういった諸々の理由により、これからKing Crimsonを聴こう!という人にはあまりお勧めできません。
 
 ところが、といいますか、それゆえにこそ、このテイクには他では得難い魅力もあるので困ってしまう。ただでさえワイルドなロック色強い演奏(途中参加の3人がそういう志向だったとされますが)の上、録音の悪さで音が潰れてしまっている分だけ異様な迫力が増しておりまして、ね。もっとクリアな録音の同じラインナップによる別のテイクもあるんですが、そっちを聴くとおとなしくて拍子抜けしちゃうくらい。
 
 アルバムを再生すると、IanDr)のドラムのハイハットが淡々と「チッ・チッ・チッ・チ」と刻んで、そいから大ヴォリュームの冒頭フレーズ「でーん、でれれっ、でっでー」が繰り出される。テンポもオリジナルより――歴代のどのテイクよりもおそらく――遅く、ずるずるとヘヴィ。歌のところも、Bozのおそらく元来は細い声に歪むエフェクトをかけているため異様な感じに。Bozさんはもともとはポップ/ロック系のシンガーだった人ですが、King Crimsonに加入するにあたりベースを習得(Frippさんが教えたとか)、その後はむしろベーシストとして名をあげ、King Crimson脱退後はBad Companyの創立メンバーとして活躍するなどしました。いずれにしてもこのテイクでのBozの歌い方はひどく「投げやり」っぽくて、歌詞の描く狂気じみた世界観に恐ろしいほどフィットしちゃってるんですよ。オリジナルを歌ったダンディなGreg Lakeや、後任に当たるジェントルなJohn Wettonとはまるで異なる「聴き手の背筋を凍らせる破滅的な歌唱」。ご本人がどういうつもりだったか知りませんが、こりゃあホントに凄い……もともとハードロック的側面を持つ楽曲ではありますが、このテイクはほとんどドゥーム・メタルというべきです。
 
 Robert Frippもブチ切れたようにフレーズを繰り出しますが、目立ってるのはMelのサックス。単純にミュージシャンシップだけを問うてもMel Collinsの才覚は抜きんでていたと思いますが、そういうことだけじゃなくて、「インプロヴィゼーション」を実に楽しそうにこなしているんですよね。Ianのワイルドなドラミングも楽曲の暴力性に拍車をかけてますけどね。で、さんざみんなで暴れまくった後、歌のパートに戻るとBozがまた……最後の歌詞“Nothing he’s got, he really needs. 21st century schizoid man.”(1040秒辺り)のところなんか怖い怖い。何かにとりつかれているようだ。
 
 わたくしこの曲が無茶苦茶好きでして、King Crimson自身が出したSCHIZOID MANっていうこの曲のヴァージョン違いをひたすら集めたミニアルバムも買いましたし、本人たちの諸ライヴ音源はもちろん、他人によるカヴァー――Greg Lakeはもちろん、April WineOzzy Osbourne西村雅彦まで――もいろいろ聴きました。さすがは名曲、どれをとってもなかなか楽しめるのですが、一番「危険」なテイクはやっぱりこれかな、と思うのであります。
 
8Steve HackettThe Court of the Crimson King」(THE TOKYO TAPES1998
  演者:Steve HackettGt)・John WettonVo, Ba)・Ian McDonaldFl, Sax)・Chester ThompsonDr)・Julian ColbeckKey
 
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 King Crimsonつながりでもう一丁。こちらは、GenesisのギタリストSteve Hackettがお友達関係を動員して行った懐かしのプログレ名曲大会の記録。1996年日本で行われたコンサートで、Steveが古巣のGenesisの名曲を披露するっていうのがメインなのですが、他のメンバーの「持ち曲」も数曲ずつ演じられました。例えばJohn Wettonはソロアルバムから「Battlelines」、Asiaのナンバーから「Heat of the Moment」(アコースティックヴァージョン)をやってました。
 
 ここで特筆ものなのは、しばらくプログレ畑での活躍のみられなかったIan McDonaldKing Crimson創立メンバーの一人)が全面参加して、見事なマルチ・インストゥルメンタリストぶりを見せつけていること。この人はサックスも鍵盤もこなす才人ですが、聴衆にアピールするのはフルート演奏で、アルバムの3曲目「Firth of Fifth」(Genesisの曲)220秒あたりで彼がフルート・ソロを吹き始めると観客も反応しています。もっと盛り上がったのは、King Crimsonの楽曲を演奏しているところ。「The Court of the Crimson King」と「I Talk To The Wind」をやっているのですが、前者などは、まずドラムのChesterが「ツタトトト……」と鳴らしただけでファンの皆さんは「来たア」ってな感じで反応、大歓声と拍手を送ります。Johnの歌を中心にヴァース・コーラスが壮麗に盛り上げられていったあと、間奏でIanのフルート・ソロ(420秒辺りから1分半くらい)になるのですが、ここでも観客が拍手喝采。そして最後のパート(歌あり)を再びバンドが演じ終えると、みたびの盛大な拍手が起こりまして、Johnも感極まって”Thank you very much indeed. Domo(どーも)
 
 言い方を悪くすれば老兵たちによるプログレ懐メロ大会なのですが、やってる方と聴いてる方が感動しちゃうんだから、やっぱり素晴らしいですよね。
 
9Chris SpeddingGuitar Jamboree」(JUST PLUG HIM IN!:LIVE ANTHOLOGY1991
  演者:Chris SpeddingGt, Vo)・Busta JonesBa)・David Van TieghemDr
 
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 クリス・スペディングさんもキャリアが長く、ソロ―アティスととしてだけでなくセッションマンとしても大活躍した人なのでまとめてお話するのは大変。いずれ本格的にお話申したいと思いますが、ここでは一曲だけ。世紀の名曲(珍曲)「Guitar Jamboree」を。

 もとは1977年のソロアルバムCHRIS SPEDDINGに収められた曲なんですが、冒頭の歌詞に“See the men that made music history at the Guitar Jamboree”とある通り音楽の歴史を築いてきたギタリストを端から紹介するのです。といっても、ただ歌詞で称えるのじゃなくて、各ギタリストのプレイをChrisが「ギター模写」して見せるっていう、宴会芸のような一曲。これがへなちょこだったらお笑いですが、さすが達人セッションマン、各人の特徴をものすごくよくとらえてるんです。
 
 スタジオ版だと、まずAlbert King(味のあるチョーキング)に始まりまして、次いでChuck Berry(十八番のイントロフレーズ他)、Jimi Hendrix(「The Wind Cries Mary」風のトーンから)、Jack Bruce(細かい刻みのベース※彼だけベーシストですが、むかしChrisが一緒に作品を作ったことがあるのでたぶんその縁)、Pete Townshend(「Pinball Wizard」風)、Keith Richards(必殺のSus4)、George Harrison(泣きのスライド)、Eric Clapton(「Layla」風フレーズ)、Jimmy PageJeff BeckPaul KossoffLeslie WestDave Gilmour……ってな具合。私の文章なんかじゃなく、ご一聴いただければ意味がお分かりいただけるはず。
 
 さてそこでこの曲のライヴ・ヴァージョンが問題です。ある意味彼の代名詞となった曲なので、長年にわたってライヴじゃ取り上げてるんですが、今回のは1981年の音源。音質はちょっと悪いですが、「ほんとにこんなのライヴでやってる」ってのがもう楽しい。取り上げられてるのはやはりまずAlbert King、そしてChuck BerryJimi Hendrix(こっちでは「Purple Haze」の一節が演奏されます)、Jack Bruce(「Sunshine of Your Love」のリフ)、Pete Townshend(〇〇風、じゃなくて完全に「Pinball Wizard」)、Keith Richards(「Start Me Up」のアタマ)、Eric Clapton(「Layla」メインリフ)、Jimmy PageJeff BeckPaul KossoffLesilie Westまで同じで、その次に原曲には無い“Robert Fripp”。ディレイかなんか(?)妙なエフェクトをかけたコードを鳴らし、ちょっとアウトなスケールを奏でる……コレ、Frippのどういうイメージなんすかね。アレ?終わっちゃった。Robert Frippがトリだったのか。
 
 同じ1981年のライヴでも、Keith Richardのところが「Brown Sugar」だったりしてますので、どうやらですね、スペディング先生はステージごとに取り上げるギタリストと楽曲を微妙に変えているようですよ。これぞライヴの楽しみ、ですかね。
<続く>