DON'T PASS MUSIC BY

"But holy men and kings would die in the year Twenty Twenty-five......"<Satan>

第33回「ライヴ好演集」(2)

 さてお次はライヴ盤ならでは、「オーディエンス参加」の名テイクを御紹介。歓声や拍手を送るだけが聴衆ではない……そしてそういうふうに聴衆を乗せるのもアーティストの腕の見せ所。
 
4HelloweenFuture World」(LIVE IN THE U.K.1989
  演者:Michael KiskeVo)・Kai HansenGt)・Michael WeikathGt)・Markus GrosskopfBa)・Ingo SchwichtenbergDr
 
イメージ 1

 

 KEEPER OF THE SEVEN KEYS(守護神伝)』パート1収録の名曲は、ライヴではどう演奏されていたの?ジャーマンメタル好きならば気になるところでございますが、初期の強力ラインナップによるその演奏が聴けるのがこれ。冒頭Mickael Kiskeが「Future World~♪」と曲名を告げると、ギター主導でグリーグの「山の魔王の宮殿にて」のメロディがちょっと(30秒ほど)奏でられ、そこから若干引っ張ってメインリフに突入。この時点で英国の観衆は大盛り上がり。歌の1番のAメロはオーディエンスが全部歌っちゃいます。引き継いで歌うKiskeの喉も絶好調。コーラスの「We all live in future world」のところも観衆が大合唱、後半をKiske(ちなみに、よく「キスク」と表記されていますが、インタビュー音源を聞くと本人は「キースキー」と言ってますね)が受けて歌い上げる。(2番もやはりコーラスは聴衆に委ねています。)
 
 間奏は必殺のツインリードも決まってますが、録音状態のためかベースが凄く迫って聴こえていい感じ。5分ちょうどくらいのところで、スタジオ版では間奏が終わって元に戻るわけですが、このヴァージョンではここからが拡張されていきます。ベースがランニングを始めたかと思うと、Kiskeが「This is, this is rock’n’roll♪」と告げて、ホントに50年代風ロックンロールのパターンに移っちゃう。KiskeはそれにのせてElvis PresleyAll Shook Up」の一節を口ずさんだかと思うと、聴衆に向けて「一緒に歌って!」、「リズムに合わせてWe all live in future worldと叫ぶんだ!」と煽動。何度か「1,2,3,4」とカウントをとって客に「We all live in future world」と叫ばせます。途中で「エルヴィス・プレスリーみたいな気分だな」とつぶやくKiske、さらに何度か同パターンを繰り返しますが、「これで最後だよ」っていわれての810秒ごろのオーディエンスの叫びは物凄いことに。そこをバンドが引き取って曲を最後までもっていきます。
 
 トータルで855秒にも及ぶテイクなわけですが、素晴らしいのはHelloweenが古典的ロックの作法たる「オーディエンスとの協同」を実践しているところ。えてして様式美に拘るヘヴィメタル界隈では、一度作り上げたストラクチャーを崩すということが不得手なアクトが多い。「きっちり演奏すること」は得意でも、臨機応変に聴衆と絡んでいくということが上手く出来ないグループもまま見受けられる中にあって、Helloweenはやはり別格でした。そもそもKiskeが筋金入りのElvis好きだということもそうなんですが、先達たる古典的ロックンロール、ハードロックの美学をしっかり学び修めているということが素晴らしいと思いますね。この辺は、テイストは違いますがかのManowarの面々が「ロックンロールが無かったら、ヘヴィメタルだって無いんだぜ」とやはり古典への敬意を見せていたのと同じ趣を感じます。
 
 まあ御託はともかく、Helloweenのライヴは兎に角楽しいんで、お楽しみいただけたらと思います。
 
5KraftwerkDenataku」(MINIMUM-MAXIMUM2006
  演者:Florian Schneider, Fritz Hilpert,Henning Schmitz, Ralf Hütter
 
イメージ 2

 

 これまでとはずいぶん違うジャンルになりますが、偉大なるジャーマン・プログレのグループKraftwerkのライヴ盤にも感銘を受けました。(ちなみに、私はプログレのディスクガイドで知ったのでKraftwerkは「プログレ」だと思っていたのですが、大学生の頃知り合った音楽に詳しい友人は、彼らは「テクノ」のゴッドファーザー的存在だよとも教えてくれました。)
 
 Kraftwerkの名前は知っていましたし、「Autobahn」なんていう長い曲は面白いなあとは思っていたのですが、正直あまり熱心に聴いたりはしていませんでした。ドラムやギターを人力で奏でるのが好きな私からすると、縁遠いように思えて自ら遠ざけてしまっていたのでしょう、ね。そんな折、さきほどもちょっと触れましたが、テクノなど(私が疎い)ジャンルにとても詳しい友人がいろいろ教えてくれて、電子音楽(?)にも若干興味を増し始めていたころに、上記のライヴ・アルバムが発売されたのです。
 
ギターやドラムもなくて人力演奏もなさそうなのに「ライヴ」ってどんな感じなんだろう?妙な好奇心から手に取った作品だったのですが、実に楽しめました。彼らの残してきた名曲の、最新ツアー世界各地で演奏されたテイクを集めたものだったのですが、やはり確かに「ライヴ」なのですね。1曲目に配された「The Man-Machine」が始まる前の聴衆の大歓声なんかもそうですが、やはり人前で演奏しているという感じがするのですよ。(映像版も出ていますので、そちらで観ればより分かりやすいかもしれませんが、私はCDを買いましたので……)
 
で、名曲名演目白押しなのですが、私の目から鱗が落ちまさに改心させられたのは、本作における「Dentaku」を聴いたときでした。「Dentaku=電卓」なのですが、この曲はすでに彼らの代表曲として親しまれておりました。(「電卓」を表す「Pocket Calculator」(英語版)など、歌詞違いの各国語版が作られているのもおもしろい。)このライヴ盤は凝った作りになってまして、「Pocket Calculator」(収録地はモスクワ)から続けて「Dentaku」(収録地は日本・渋谷AX)に流れるように配置されているのです。ヴァージョン違いを続けて味わうような感じですが、この「Dentaku」、曲が始まったところの大歓声は他の楽曲と同じなのですが、歌が始まると聴衆が一緒に歌うのですよ。歌詞が“日本語”で歌いやすいということもあるのでしょうけれども、「♪Boku wa ongakka, dentaku katate ni…(僕は音楽家、電卓片手に……)」とね。ずーっと、です。
 
私はその場に居たわけでもありませんし、テクノ音楽の熱心なファンとも言えませんし、クラフトワークについてもちょっとしか知りませんでしたけど、このテイクを聴いて涙が出ました。映像を観ていないのでこれらはすべて想像ですが、自分の好きな音楽家集団が目の前で素敵な曲を奏で出した時、決してアーティストから煽られたわけでなくても、思わず一緒に歌いたくなってしまう、ということはあるのだなと。これで私が電子音楽(この言い方も妙だなとは思いますが)に抱いていた「なんとなく冷たい」イメージが無くなりました。やはり人間の作る音楽を人間が聴くということは素晴らしい。聴いて踊る、シンガロングする、ヘッドバンキングする……あるいは微動だにせず聴き入ったっていいのですが、とにかく、煎じ詰めれば空気の振動でしかないものによって感動が得られるのですから。
 
まったく疎いジャンルの音源を聴いて勝手に衝撃を受けてるんだから世話はないです、ね。そもそも詳しい人からすれば「当たり前だろ」というところでしょうけど……この奇妙な感激は誰かと共有できるものなのか?よくわかりませんが、私のように電子音楽が苦手とか聴かず嫌いとかの人がもしいらっしゃったら、「Dentaku」を聴いてみたら如何、とは申し上げたいですね。
 
6Twisted SisterI Wanna Rock(LIVE AT HAMMERSMITH1994)
 演者:Dee SniderVo)・Eddie OjedaGt)・Jay Jay FrenchGt)・Mark MendozaBa)・A.J.PeroDr
 
イメージ 3

 

 今回の最後はまた「自分の畑」に戻ってハードロックで。米国のバンドTwisted Sisterは、80年代に主に派手な外見で話題になったり、超絶技巧プレイヤーが居たわけではなかったりといった点で、なんだか実力が過小評価されている気がしますが、「いい曲を書き、熱く演奏する」という基本を守っているという意味で最高のロックバンドだと思います。
 
 「I Wanna Rock」は1984年のSTAY HUNGRYに収められた楽曲で、3分ほどで終わってしまうコンパクトさも良いのですが、このシングルヒット曲を彼らはライヴで長尺にしてしまいます。1984年のハマースミスでの実況録音ですが、まずテンポはスタジオ版より速くなっておりまして躍動感倍増。230秒くらいで最後まで進んでしまうのですが、ここからがオーディエンス煽りの天才Dee Sniderの独壇場。まずは、聴衆に「Rock!」と叫ばせるシリーズ。430秒のあたりではバンド演奏を完全に止めてしまって、客に説教、「アメリカのラジオで流れるんだから、英国の聴衆がどれだけcrazywildか思い知らせる気でデカイ声でいこうぜ!」(大意)。バンド演奏無しでコール&レスポンスの練習をさせてから、620秒から演奏再開、自らのコールに応えさせて「Rock!」をひたすら叫ばせてエンディングまで、持っていっちゃいます。結局8分ほどに拡張され、客の盛り上がりもトンデモないことになるのでした。ライヴ本編はこのあとメンバー紹介からクロージング・ナンバーへと続きます。
 
 Twisted Sisterは、売れたのは80年代でしたが、もともとは70年代前半から活動していた古株でした。クラブなどで叩き上げた実力はやはりコンサートで発揮され、ハマースミスやレディングといった大舞台でもまったく動じぬ堂々たるパフォーマンスを披露しております。このバンドも、ライヴ盤を聴く楽しみを与えてくれますよね。
<続く>