(1)Annihilator『SET THE WORLD ON FIRE』(1993)
メンバー:Jeff Waters(Gt, Ba)・Aaron Randall(Vo)・Mike Mangini(Dr)・Neil Goldberg(Gt)
作品の感想は前回述べましたが、少し追加。まず、ドラマーMike Manginiさんは、現在Dream Theaterで活躍してる(つまりMike Portnoyの後釜)凄腕。Annihilatorには時々参加してまして、『ALL FOR YOU』(2004)・『METAL』(2007)でプレイが聴けます。DreamTheaterはポートノイの後任を選ぶにあたって大規模なオーディションを行ったのですが、その時の様子は映像にもなっているので、ドラム好きの人はぜひ探してごらんになることをお薦めします。結果的にDream Theaterには入らなかった面々も含めて恐ろしいような腕利きドラマーばかり。
映像、ということでいうともう一つお薦めあり。私の好きな「Knight Jumps Queen」なんですが。動画共有サイトで探すと、「バンド・リハーサル映像」が出てくるのですが、これがナイス。93年の来日公演を控えてカナダのスタジオで練習してるところらしいんですが、メンバーがホントに楽しそうなんですな。(ここではドラマーはRandy Blackさんにスイッチしています。)
(2)Speeed『POWERTRIP PIGS』(1999)
メンバー:Aaron Randall(Vo, Gt)・Jack Frost(Gt)・Bernie Altmann(Ba)・Ray Hartmann(Dr)
バンド名はこれで良いのです、念の為。AaronとRayは元Annihilator。同じ時期にバンドに居たことはないはずですが。Jack Frostはその界隈を知る人ならピンと来る(?)、筋金入りのメタル・ギタリスト。けっこう色々なところに顔を出してますが、本業は自らのバンドSeven Witchesでしょうね。むかし彼らの『XILED TO INFINITY AND ONE』(2002)をジャケ買い同然で入手し、その内容の“メタル・バカ”(最大限に褒めております)っぷりに感銘を受けたことがある。「Metal Tyrant」(タイトルからしてもう最高)だけでも聴いていただきたいですな。
さて本作『POWERTRIP PIGS』。1曲目「What Dya Want」は、Aaronの咆哮が響き渡るPanteraっぽい(?)グルーヴ・メタル。『SET THE WORLD ON FIRE』のメロディックなスタイルとはかなり異なっております。次「Dragon」以降も同系統。ゴリゴリしたリフで押すのも悪くはないのですが、ちょっと一本調子で飽きが来るかな。録音状態(籠った様な?)のせいもあるかもしれませんが、聴いててちょっと疲れるのも正直なところ。ただし、Ray Hartmannのドラミングが良い意味で“機械的じゃない”ので、そこに耳を傾けるという楽しみ方は出来る。Rayさんは、これはAnnihilator在籍時から有名だったそうですが、“クリック”を聴いてプレイするっていうのが嫌いな人だったらしいんですね。人間的グルーヴを大切に!素晴らしい。
若干メロディアスな歌唱が聴けるのはパワーバラード調の「I Used To Believe」くらい。あとはほぼ全編ミドルテンポ中心のパワー・メタル。相当のマニア以外にはおすすめしがたい……と思ったら、またも最後に一曲ボーナス的に入ってるね。Christopher Crossの(というか、そのSaxonによるカヴァー・ヴァージョンの?)「Ride Like The Wind」のカヴァー。おお、これだよこれ、Aaronさん、なんで全編こうやって歌い上げてくれなんだのじゃ。
(3)Anthem『GRIEVE OF HEART』(2001)
アンセムは1985年にメジャー・デビュー、1992年に解散。わたくしがメタルに覚醒して同時代の音を求めていた1990年代末には形がありませんでしたので、旧譜を探しては往年の名曲に感じ入ったりしていたものでした。
2000年にGraham Bonnetをゲスト・リードヴォーカルに迎えた企画盤『HEAVY METAL ANTHEM』が(私にしてみると)突如出されたのを機に、彼らを追ってみることにしたわけですが。その企画盤では、メジャー・デビュー後二人目のヴォーカリスト森川氏の歌っていた(バンド中後期の)楽曲が10曲中9曲取り上げられていまして、“初期好き”の私には若干物足りない感じがあった――あとでよく聴くと後期の曲もいいなアと思えたので、いまでは文句などないのですが――のでした。
はたしてアンセムは継続するのか?続報を待っていると、なんと初代(インディ時代を除く)ヴォーカリスト坂本氏が復帰して作品を出すというではないですか。これは楽しみになりましてなあ。シングル『GRIEVE OF HEART』はたぶん発売日に買ったんじゃないかな。「Grieve of Heart」「XTC」「Can’t Get Away」の3曲入り。
「Grieve of Heart」は、力強いリズムとリフの上での坂本ヴォイスが堪能できる佳曲で、むかしの楽曲だと「Night After Night」あたりをなんとなく思い起こさせるもの。コーラスの「Let your eyes stare to the sky/哀しみに負けないように」なんていう歌詞を、演歌・歌謡曲的にならないぎりぎりのところで哀愁込めて歌えるメタル・シンガーは坂本氏しかおるまいと思いますね。日本にも偉大なメタル系ヴォーカリストはたくさんいますが、この味わいは余人をもって代え難いのでは。
「XTC」は、本間さんのパワフル・ドラムが素敵な疾走ナンバー。柴田さんのドライヴィング・ベースも良いなあ。歌詞に「お前は今夜もマウス片手にNo No No」とか「Why you hide your face?」とか出てくるところからするに、ネット空間での無責任なる悪意に対する怒りが歌われているのかな。(むかし雑誌のインタビューでご本人の曲解説を読んだ気もするのですが、忘れてしまいました。)こういったストレートなfurious songということだと、森川氏在籍時のやはり疾走楽曲「Do You Understand?」なんかを思い出してしまいますね。
「Can’t Get Away」は、確かシングル・オンリーですが、これまた力強い楽曲。私の好きなRiotがハード・ロック時代に得意としていたリフ・メロディ・ソロの展開を彷彿とさせてくれる。(時期的にはAnthemのこの曲より後になりますが、Riot『THROUGH THE STORM』(2002)収録の「Lost Inside This World」辺りを聴いてもらえば、私の言わんとするところ、おわかりいただけるかと。)
(4)Anthem『SEVEN HILLS』(2001)
メンバー:同上。
『GRIEVE OF HEART』に続いて出たアルバムですので、もちろん買いましたとも。名曲「Grieve of Heart」を聴こうと思ったら、(シングルよりは)いまだとこちらの方が入手しやすいのでは。この作品が高品質であったことも歓迎されて、その後Anthemは本格的に活動を続けていくことになったのでしょうから、記念碑的なアルバムともいえると思います。
(5)坂本英三『メタル一直線』(2000)
メンバー:坂本英三(Vo)・太田カツ(Gt)他
2000年の作品ですから、アンセム復帰より前のものになりますが。私は坂本さんの声を聴きたいときはコレを出します。これまた私はジャケ買いしたのであった。この(↓)画で『メタル一直線』とか言われたら買わないわけにいかねえだろ。で、買ってから曲名よく見たら、Riotの「Heavy Metal Machine」やってるじゃないですかあ!よりによってRhett Forrester時代の。感動しましたわ。
アルバムは、オリジナル曲とカヴァー曲が2:1くらいの比率なんですが、何れも素敵な出来。1曲目の“オレ流のジャーマン・メタル”「Guten Tag」の無茶な疾走と絶叫に続いてManowar「Metal Daze」の叫びまくりカヴァー(Eric Adamsはあんなに叫んでないぞ)。次いでメロウな曲を歌っても暑苦しくなる本領発揮の歌謡メタルの連発。まさにタイトルさながら暴走車両の如きRiot「Heavy Metal Machine」を全力カヴァー、そこから爽やかなるPretty Maids「Please Don’t Leave Me」(オリジナルはJohn Sykesですが、坂本氏はそちらは聴いたことがなかったとか……)につないで、締めると。なおこの本編後の隠しトラックの中に「信じた道を突き進もう、メタル一直線……」云々という歌詞が出てまいります。
ギターの太田カツ氏やベースのMasaki氏など、楽器陣も名人勢ぞろいで楽しめるので、機会があれば一度チェックなさってはいかがでしょうか。<完>