“AnnihilatorのAaron Randallの声って、Anthemの……?”、略してAAAという題目であります。
まじめにやれとお叱りを受けそうですけど。今週はAC/DCのマルコム・ヤング氏の訃報が入ってきたりしたもので、当初の予定を見直そうかどうしようかほうけているうちに時間が過ぎて行ってしまいました。つなぎでもなんでも書かねばと思いましてな。
Annihilatorの『SET THE WORLD ON FIRE』(1993)を聴いていたんですよ。ラインナップの変わった現在でもよく彼らが演奏する「Set the World on Fire」、本格的バラード「Phoenix Rising」、躍動するベースラインが妖しく疾走する――私は本作中この曲が一番好きだったりする――「Knight Jumps Queen」、緩急つけた奇怪なリフが次から次へと繰り出される彼ら(というかJeff Waters)十八番のメカニカル高速ナンバー「Brain Dance」……前作や前々作に比べると全体に“メロディアス”になったといわれる『SET THE WORLD ON FIRE』ですけども、一筋縄でいかない感じというか、(何が出てくるかわからん)お化け屋敷的テイストっていうか、そういう個性はしっかりあるよなあ、と再確認。
そこまでは、まあよいのです。私の持っているCDは日本盤なんですが、ボーナス・トラックが一曲入っておりまして、それがJudas Priestの名曲「Hell Bent for Leather」なのですよ。元の曲は良いし、Jeff Waters(Gt)はジューダス・プリースト大好きだっていう話なんで、安心のクオリティ。
すると自然と意識は「声の違い」に行きますわナ。オリジナルのRob Halfordの歌唱は、コーラスの“hell bent,hell bent for leather”の“hell”っていうところが「ヘル」というより“hull”っていうふうに聴こえるのですね。どうやら英国流アクセントのようなんですが。“leather”のところも少し濁った感じの発音なので、「ドスのきいた」サビになるわけです。
一方のアーロンさん(カナダ出身とのこと)の発音は米国英語のようでして、コーラス部分はやや軽く聴こえます。さらにそのほかの、多重録音っぽくないAメロ・Bメロのところ(要するにアーロンさんヴォイスがよく聴こえるところ)を、ずーっと聴いていくっていうと、「アレ、なんか似た声質の人がいたような?」という錯覚に陥るわけ。『SET THE WORLD ON FIRE』本編を聴いてても特にそう思わなかったのに、このボートラだけは、その声の「ちょっと細い感じ、鼻にかかった感じ、声を張った時の感じ」が、あの人にそっくり……じゃないかなあ。Anthemの坂本英三氏に。
Anthemの日本語詞を歌っておられるときの氏の歌唱と共通項を感じる人は多くないかも知れませんが、英語詞の曲を聴いてもらったら「アッ!」てな具合になるのでは。例えば屍忌蛇『STAND PROUD!:ALL FOR HEAVY METAL』(1996)に入ってる「This Is War」(Vandenberg)・「Kill the King/Bark at the Moon/Freewheel Burning/Lights Out/Aces High」(メドレー:Rainbow-Ozzy Osbourne-Judas Priest-UFO-Iron Maiden)なんかはどうでしょう。「ちょっと細い感じ、鼻にかかった感じ、声を張った時の感じ」、似てませんかね。
一度「似てるなあ」と思ってしまうと、Anthemの曲を聴いてもそういうふうに聴こえてしまう不思議。まあ、洋の東西を超えて声が似てるなんてことは決して珍しいことでもないのかも――Mike Vescera(元Loudness、Yngwie Malmsteen)とKim Kyung-ho(キム・ギョンホ)のディストーション・ヴォイスも“似て”ると思います――しれませぬが。声質というのはギターやドラムのスタイルなんかよりもずっと個性的なるものですから、聴いててちょっとびっくりするわけで。いずれにしても、歌い手の顔が浮かぶ声を持っているのは、すごいことですよね。
などと、さも大発見したふりをしておりますが、種明かしをしますとですね。音源を手持ちのプレイヤーで流して聴いていると、アーティストABC順に掛かっていくわけなのですが、Annihilatorの次にAnthemが入っていたのですよ。「Hell Bent for Leather」のあとに、ほぼ間を開けずAnthemの「Grieve of Heart」が流れましてな。それでちょっと気になって聴き直したら……という、そういう程度の話でございました。
さて、マクラにとどめるべき雑談が長くなってしまいましたが、私としては素敵な音楽が紹介できればそれでよいのでして。今回はAnnihilator『SET THE WORLD ON FIRE』(上述)の他に、Aaron RandallのやってたSpeeedと、Anthem『GRIEVE OF HEART』(シングル)でもご案内申し上げましょうか。<続く>