(酉)Mick Taylor Band「Little Red Rooster」『LIVE』(2001)
Mick TaylorといえばThe Rolling Stonesでの活躍が有名でしょうが、彼の名演はその前のJohn Mayall & The Bluesbreakers『CRUSADE』(1967)などでも聴けます。つまりは、正統的なブルーズ・ロック・ギタリストということ。ストーンズ以後も旺盛に活動しているといえましょうが、こんなバンドをやっていたとは知らなかった。ベースがNoel Redding(元Jimi Hendrix Experience)、ドラムがJohn Coghlan(元Status Quo)のトリオ。2001年のライヴが何故か数年後にリリースされました(オフィシャルなのかどうか不明ですがTower Recordsで普通に売ってました)。ブルーズ・クラシックのカヴァー5曲入りで、そのうちのひとつがHowlin’ Wolfで有名なWillie Dixon作の「Little Red Rooster」。
The Rolling Stonesもブルーズ・リヴァイヴァリストとしての本領を発揮した初期にこの曲をカヴァーしていましたね。一方MTBのこのヴァージョンは、冒頭にテイラーのソロ・スライド・ギターを1分半ほどフィーチュアし、そこからグッとヘヴィにシャッフリンしていきます。はっきり言って地味な演奏なのですが、ミックのブルーズ・プレイは渋い味わいに満ちているともいえます。あと私としては、Status Quoを脱退して後(1980年代以降)の動向が杳として知れなかったジョンさんのドラミングが聴けただけでも感涙ものでした。クオ時代から重めのビートを出す人でしたが、おんなじでしたね。
(戌)Axel Rudi Pell「Call Of The Wild Dogs」『WILD OBSESSION』(1989)
元Steeler(米国のでなくドイツのバンド)のギタリストAxel Rudi Pellのファースト・ソロ・アルバム『WILD OBSESSION』。これはなかなかの正統派メタルの名盤ですよ。まず、楽曲が良い。彼の後のアルバムみたいな「レインボー偏愛」がなくて、程よくブリティッシュ、程よくアメリカンなメタル。この作風に合うCharlie Huhn(元Gary Moore、Ted Nugent他)の熱いヴォーカル。腕前を云々されることもあるが、リフメイカーとしての力量確かなアクセルのギター。ドラムは後にStratovariusで活躍するJörg Michael。悪かろうはず無し。
※アクセルの在籍したSteeler『UNDERCOVER ANIMAL』ジャケット
スピーディなイカす1曲目「Wild Cat」に続いて、この「Call Of The Wild Dogs」が始まります。力強いドラムの上にブンブンいうベースが乗って疾走感を醸成。“Hey, hey, hey, never say no. Heed the call of the wild dogs.”っていうキャッチーなコーラスも楽しいね。ギターソロも、後に(若干)揶揄されるような強引な速弾きは抑え気味でいい感じ。
アクセルのソロ・アルバム、2作目ではヴォーカリストが交替しちゃうんですよね。チャーリー良かったのに残念……と嘆く必要はなかった。後任はRob Rock(後にImpellitteri)じゃないの。その後もJeff Scott Soto、さらにその後Johnny Gioeli。どうやったらこんなに次から次へとうまい歌手を招致できるのか。というわけでアクセルのアルバムにはほとんど外れ無し。(似たものが多いともいえるんですがね。あと、ライヴ盤になるとどういうわけか疾走曲はあまり入れてくれず、ミッドテンポの曲や長尺ものを大量収録してくるのは解せないけど。)
(亥)Black Sabbath「War Pigs」『PARANOID』(1970)
「亥」は中国だと猪というより豚のようですね。というか、そういうことにしておかないと曲が出せません。さすがに“boar”を含む曲名って知らないぞ。豚さんなら、The Beatlesの「Piggies」(作者のGeorge Harrisonは来日公演でも演じてましたね)なんていうのもございますが、わが所蔵品の中だと圧倒的に「War Pigs」が多かった。オリジナル、サバスのライヴ(複数種類)、オジーさんのライヴ、Pentagram(当時はDeath Rowと称す)によるカヴァー版など。
で、いろいろ聴き比べましたが、やはりオリジナルの禍々しさは半端でない。ズルズル引きずるギターリフ、うねうね動き回るベース。意外に軽やかなところもあるドラムに煽られて歌い上げるヴォーカル。歌ってる内容は“戦争に狂奔する軍人、無責任な政治家”を痛烈に批判するもの。以前、XTC「Wardance」っていうのを紹介もしましたが、“war”ソングの流れはブリティッシュ・ロックには確実に存在する。(John Lennonの「Happy Xmas(War Is Over)」なんかもそうでしょう。)のですが、この曲のダークさは群をぬいていると思ふ。曲の終わり際の回転数が上がってくようなところも不気味だし。『PARANOID』の1曲目がこれだからね、1970年当時は凄いインパクトだったと思いますよ。ちなみに2曲目が「Paranoid」。
さっきも申しましたが、ライヴ・ヴァージョンも聴き比べましたよ。『PAST LIVES』のオジー版は、ちょっとテンポが上がってて性急な感じ。『LIVE EVIL』のロニー(ジェイムズ・ディオ)版は、やはりちょっと違和感あるかな。ロニーの歌ははっきり言って前任者よりうまいと思うのですが、このあたりの旧曲に関しては、オジーの上ずったような声で歌われることで魅力を発すると思われます。面白いもので、同じロニー版でも、『MOB RULES』のデラックス版ボーナスのライヴの方はワイルドな歌い方が合っていて悪くないのね(“no more war pigs”っていう歌詞の”p”を吐き捨てるように歌うのがポイントだね!)。因みにロニーはRainbow以前にやっていたElfでもこの曲をカヴァーしていたようですね。
他には、イアン・ギラン版も聴いたことありますわ。歌いまわしはまるっきりギラン流(オジーっぽくしようとしてない)なので、まあサバスっぽくはないんですが、彼の明るい声質がかえって曲調とミスマッチを起こして“狂気”を感じさせたりも。ギターのTony Iommiもいつも以上に気合い入れて弾いてるみたいだし。あとはね、レイ・ギラン(後にBadlandsほか)が歌ってるのも聴いた。これは、Tony Iommiのソロアルバム『SEVENTH STAR』に伴うツアーの音源なんですが、Ray Gillen歌うまい……元の曲にはないフェイクなんかも交えちゃってさ。
そんななかで最強と思われるのが1998年の『REUNION』のオジー版。ほぼ20年ぶりにオリジナルメンバーが集結し、バンド発祥の地バーミンガムで敢行したフル・ライヴの記録が本作なのですが、1曲目が「War Pigs」なのですね。彼らの登場を待ちわびる観客の歓声が物凄くなってるところに、例のリフが響き渡って、色褪せぬオジー・ヴォイスが乗っかるんですからもう大変。ギターソロの途中で思わず観客に向かって“You’re number one!”とか叫んじゃう可愛らしいオジー、後半なんかほとんど客に歌わせて自分はリードをとってない。やっぱりこの曲は、オリジナルBlack Sabbathに敵うものなしですね。
<なぜか続く>