<関連作品>
(1)XTC『THE GREATEST』(1998)
XTCのキャリアを俯瞰するアイテムとしては『THE COMPACT XTC』(1985)『FOSSIL FUEL:THE XTC SINGLES』(1996)がありますが、私が偶々手に入れた『THE GREATEST』もなかなかの優れもの。
1. Science Friction [AP]
2 .Statue Of Liberty [AP]
3. This Is Pop? (Live Sydney 20.7.1979)[AP]
4. Are You Receiving Me? (Live Sydney 20.7.1979)[AP]
5. Life Begins At The Hop [CM]
6. Making Plans For Nigel [CM]
7. Towers Of London [AP]
8. Living Through Another Cuba (Live London 12.10.1980) [AP]
9. Generals And Majors (Live London 12.10.1980) [CM]
10. Respectable Street (Single Version) [AP]
11. Senses Working Overtime [AP]
12. Ball And Chain [CM]
13. Wonderland [CM]
14. All You Pretty Girls [AP]
15. Grass [CM]
16. Dear God [AP]
17. The Mayor Of Simpleton [AP]
18. The Disappointed [AP]
これ一枚でXTCが全部わかる、とは言えませんけども。①1977年から1992年までの作品をピックアップしてその音楽的変遷をたどれるようにしている点②レアなライヴ音源を入れてくれていることで、XTCがいかに優れたライヴバンドであったかわかるようになっている点、はよろしい。というか、私はまんまと策にはまり、彼らの作品集めに奔走するべく仕向けられてしまいました。
1曲目はデビューとなった『3D・EP』(1977)から。Science 「Fiction」でなく「Friction(摩擦)」となっているところがミソ。デビュー時メンバーだったオルガニストBarry Andrewsの鍵盤が炸裂する疾走パンク・NW・プログレ?です。鍵盤ソロの後のAndyギターソロもワイルドで良し。あと、個人的にはTerry Chambersのドラミングはツボにはまる。以前ライデン湯澤殿下のところでも述べましたが、私は「タイコを一音一音きっちり叩き込む」タイプに敬意を覚えるのです。本作では13曲目までがTerryのドラム。
*奥で鍵盤弾いてるのがBarryさん
2曲目はデビューLP『WHITE MUSIC』(1978)収録のポップで軽快なナンバー。同作は「Radios In Motion」「Cross Wires」「Into The Atom Age」「Neon Shuffle」など「短い」「スピーディー」「鍵盤派手」な曲が多くて楽しいのですが、なぜかBob Dylan「All Along The Watchtower」のカヴァーなんかもあったり。本ベスト3曲目もここでは勢いあるライヴヴァージョンを聴けますが、オリジナルは『WHITE MUSIC』に収録。同じくライヴが収録されている4曲目は、もともとはアルバム未収録のシングル(1978)。
*『WHITE MUSIC』ジャケット
続く同年のアルバム『GO 2』の後オルガニストBarryは脱退、代わってDave Gregoryが加入します。そして作られた『DRUMS AND WIRES』(1979)では、Colin曲の成長が目覚ましく、5曲目や大ヒットの6曲目が登場。5曲目「Life Begins~」は一時期彼らのライヴのオープニング・ナンバーだったようです。私もこの曲が好きすぎて、一緒にバンドをやっている友達に頼んで二人で強引に上演したこともありました(友人がGt+Vo、私がDr。有難う!)。
ベスト盤7~10曲目は、世評も高い『BLACK SEA』(1980)から。この頃バンドは非常に盛んにライヴを行っており(8曲目・9曲目はその証拠)、その実力も折り紙付きだったのですが、これが後にAndyにとって重圧になったといわれます。
ここに収める11曲目・12曲めを含む大作アルバム『ENGLISH SETTLEMENT』(1982)を完成させたバンドは再びツアーに出ますが、Andyはステージ・フライト(舞台恐怖症)におそわれ、以降ライヴ活動を完全にやめてしまいます。(この辺りの事情はいろいろ言われているようですが、本人たちの証言はやはり『ソングストーリーズ』をどうぞ。)The Beatlesが後期(1967年~)にはまったくコンサート活動をせず作品を作り続けたであるとか、The Beach BoysのBrian Wilsonがやはりバンドのライヴからは身を引いて制作に打ち込んだとかいろいろ先例はあるようですが、これはそれなりに事件でした。ライヴからスタジオ制作に重点が移ったことと期を一にするように、ドラマーTerry Chambersがバンドを脱退しています。
以降のXTCは、『MUMMER』(1983)・『THE BIG EXPRESS』(1984)・『SKYLARKING』(1986)・『ORANGES & LEMONS』(1989)と作品を発表していきます。13曲目は『MUMMER』、14曲目は『THE BIG EXPRESS』、15・16曲目は『SKYLARKING』、17曲目は『ORANGES & LEMONS』のナンバーです。間の空いている1985年と87年にも彼らはThe Dukes Of Stratosphearという変名で作品を出していますので、その創作意欲は実に旺盛だったといえるでしょう。しかもまたそのすべてが名作なのですから、見事です。
――「売れた」かどうかは別問題で、この時期最も話題となった(なってしまった)のは、『SKYLARKING』の制作をめぐるプロデューサーTodd RundgrenとAndy Partridgeの確執・騒動だったというのがなんとも……でも、揉めに揉めて出来たという『SKYLARKING』はポップ名盤の誉れ高く、シングル「Dear God」はヒットしちゃったりなんかしてるんですよね。17曲目「The Mayor Of Simpleton」も彼らにとっては久々のヒットだったようですが、練りに練られたベースライン(Andyが考えたらしいですが)に乗るキャッチーな歌メロは確かに魅力的ですね。ブリッジ部分で炸裂するPat Mastelottoのパワフルドラミングも◎。で、最後が「The Disappointed」とこうなるわけです。
*上がVol.1、下がVol.2のジャケット
このアルバムで総括された時期より後には、『APPLE VENUS VOLUME 1』と『WASP STAR(APPLE VENUS VOLUME 2)』が出ています。前者はアコースティック・オーケストレーションが主体のやや牧歌的な作風、後者はエレクトリック中心のバンド的サウンドとわかれていますが、どちらもやはり名作。お薦めできます。<もう少し続く>