<中期>1984-1989
『SAINTS & SINNERS』をもって一旦解散となったWhitesnakeですが、David Coverdaleの創作意欲は衰えていなかったようで、メンバーを入れ替えて1983年にはレコーディングに入ります。Davidと相棒Micky Moody、Jon Lordの残留組に加え、ギターにMel Galley、ベースにColin Hodgkinson、そしてドラムにCozy Powellを迎えて作られたのが『SLIDE IT IN』でありました。
Mel Galleyは、かつてGlenn Hughesも在籍した英国のTrapezeのギタリスト。ColinHodgkinsonは英国ブルース界のゴッド・ファーザーAlexis Kornerのバンドやジャズロック・グループBack Door(未聴)でプレイしていたベテラン・ベーシスト。そしてCozy Powellは言わずとしれた英国ロック界のスター・ドラマーで、これ以前にはJeff Beck GroupやRainbow、Michael Schenker Groupなどに居ました。
(ついでに。Trapezeはファンキーなハード・ロックが楽しめる『YOU ARE THE MUSIC…WE’RE JUST THE BAND』(1972)がお薦め。Alexis Kornerは数多く作品がありますが、ハード・ロック・ファンには60-70年代の音源を編集した『BOOTLEG HIM!』(1972)が楽しめるのでは。もちろんColin Hodgkinson参加のトラックもありますし、CreamのJack BruceやFreeのAndy Fraserがそれぞれベースで加わった音源、The Rolling StonesのCharlie Wattsがドラムを叩いている音源、Led ZeppelinのRobert Plantが歌っている音源――いずれも各バンドでデビューする前の“若き日の録音”と思しいですが――も聴けるのでございます。そして、Cozy Powellについては、Jeff Beck Groupではまず『JEFF BECK GROUP』(1972)の「Definitely Maybe」。これは映像を探して観て下さい。フロントにカッコいいJeff Beckが居て、キーボードのMax Middletonも存在感あるんですが、後ろにいるドラマーCozy様に何故か目が行ってしまいます。
Rainbowだとやはり『RISING』(1976)のラスト二曲「Stargazer」「A Light In The Black」ですかね、どっちもイントロから彼のドラミングに圧倒されます。MSGは、『HALF LIVE!』ヴァージョンの「Armed And Ready」「Into The Arena」をどうぞ。オリジナル・アルバムではやはり名手Simon Phillipsが叩いていてそれも見事なのですが、このライヴではCozy Powellが完全なるハード・ロッキンVer.に変貌させています。この二曲は近年リイシューされた『THE MICHAEL SCHENKER GROUP』(1980)にボーナストラックとして入っていますので、一挙に2ヴァージョン聴くことも出来ます。)
またしても脇道にそれてしまいました。『SLIDE IT IN』のお楽しみポイントは、新ドラマーCozyのプレイにあるかなあと思うもので。楽曲は従来のWhitesnake流のブルージーなロック路線なのですが、Dave Dowle、Ian Paiceとはまた違って各拍のアタマのアタックが強いCozyドラミングの成果で「ハード」な印象が深まっているように感じます。十八番のミドル「Love Ain’t No Stranger」、ZEP風の(?)「Slow An’ Easy」、疾走感のあるキャッチーな「Guilty Of Love」、いずれでも成果は明らかかと。
ちなみに『SLIDE IT IN』は、完成後に米国のレコード会社の要求でリミックスが施されることになり、アメリカ盤ではベースとギターの一部がNeil Murray(Ba)とJohn Sykes(Gt)のプレイに差し替えられているといいます。<続く>