<今回取り上げた作品>
(1)Van Halen『BEST OF VOLUME Ⅰ』(1996)
思い出した。このベスト盤が物凄い欲しくて、近くの駅ビルに入ってた「BOX」っていうCDショップで予約して買ったんだった。私めったに予約までして買うことはないんですがね。いまオビを見ると、「グレイテスト5大特典」として(1)日本先行発売(2)日本盤のみボーナス・トラック収録(3)“ヴァン・ヘイレン虎の巻(ライナー・ノーツ、ディスコグラフィー、年表)封入”(4)オリジナル・ニュー・ロゴ・ステッカー(5)オリジナル・グッズが当たる応募券、と書かれてる。(5)の「オリジナル・グッズ」はVHロゴ入りの「スタジアム・ジャンパー」か「スポーツ・タオル」が当たるんだそうで……アレ?オビのスミが三角に切り取られてるから、かつての私は応募してたんでしょうねえ。うちに景品は無いので「ハズレ」だったんでしょうが。(4)のステッカーは使わずにとってありますわ。(3)のようなもの、インフォものは、当時の私には超お宝。時代の変化は恐ろしいもので、いまになるとこの部分こそ最も容易に(ネット上の情報などで)代用されてしまうのですけども。「CDと紙媒体(ブックレット)を買う」、っていう文化はこの先どうなってしまうのでしょうか。危機感を覚える同好の士はおられませぬか。
「You Really Got Me」について一言だけ。オリジナルはThe Kinks、1964年のヒット曲なのであります。ロック原理主義者の私としては、「まずはオリジナルを聴けい」といいたいところなんですが、この曲がVan Halenのお陰でリバイバルヒットしたことは、ご本家The Kinks(特に作曲者でありリーダーのRay Davies)にとっても嬉しい誤算(?)だったようなのですね。70年代末のThe Kinksは、実はしっかり活動してはいたのですが、大きく話題になったのは“若手からのリスペクト”だったりします。当ブログ第1回で申しましたようにThe Jamが「David Watts」をカヴァー。The Pretendersは「Stop Your Sobbing」をカヴァー。そして、新世代ハードロックの雄Van Halenが「You Really Got Me」をカヴァーしたわけです。
The Kinksは1980年に『ONE FOR THE ROAD』というライヴ・アルバムを出しますが、そこでもしっかりこの3曲を収録。アレンジも心なしか若手の解釈に合わせたものにしてるみたいで、微笑ましいです。「You Really Got Me」なんか、Dave Daviesが張り切っちゃって、ほとんどヘヴィメタルになっちゃってるんでさあ。最高!
ちなみに、Van Halenは1982年の『DIVER DOWN』ではやはりThe Kinksの「Where Have All the Good Times Gone」をカヴァーしているのです。よほど好きなのね。
(3)David Lee Roth『EAT ‘EM AND SMILE』(1986)
Van Halenというバンドを飛び出たDavidは、Steve Vai(Gt)・Billy Sheehan(Ba)・Gregg Bissonette(Dr)という超絶楽器巧者と組んで作品を出しました。プロデューサーはVan Halenも手掛けたTed Templeman。10曲約30分という清々しいまでのコンパクトさですが、例えばBilly SheehanがTalasでやっていた「Shy Boy」の再録なんかはトンでもないことになってますな。初めて聴いたときはテープ早回ししてんのかと思った……VaiとSheehanがいきなり無茶なユニゾンを決めまくるんですからね。これだけ楽器が「立ってる」と歌なんか埋もれそうですが、さすがはDavidさん。「上手い」歌とはちょっと違うんですが、ちゃんと「オレのアルバム」にしてます。ロック・クラシックの「Tobacco Road」なんかも気持ちよさそうに歌ってます(Spooky ToothとかEdgar WinterじゃなくてNashville Teensのヴァージョンが下敷きかな)。Vaiさんも弾きまくり。
(4)Sammy Hagar & the Circle『AT YOUR SERVICE』(2015)
Sammy(Vo,Gt)にMichael Anthony(Ba)、Jason Bonham(Dr)、Vic Johnson(Gt)が合流して作ったロックバンド。Jason Bonhamは名前でおわかりの通り、かのLed Zeppelinの名ドラマー故John Bonhamのご子息。Phil MoggらのUFOで叩いたり、Joe Bonamassaと一緒に仕事したり(GlennHughesとのBlack Country Communionとかね)してます。Vic Johnsonは長年Sammy Hagarを支え続けているギタリスト。『AT YOUR SERVICE』はライヴ・アルバムで、サミーのソロ曲、ヴァン・ヘイレンの曲、レッド・ツェッペリンの曲、モントローズの曲を演っております。
モントローズの「Rock Candy」やツェッペリンの「Good Times Bad Times」「When the Levee Breaks」「Whole Lotta Love」「Moby Dick」「Rock and Roll」なんかも楽しいですが、やはりサミー曲とVH曲がこなれてる感じ。冒頭の「There’s Only One Way To Rock」や、「I Can’t Drive 55」などお馴染みのソロ曲に加え、ブルージーな名曲「Little White Lie」(渋い選曲、ナイス!)なんかもあり。そして、VHの「Poundcake」「When It’s Love」「Why Can’t This Be Love」「Finish What Ya Started」「Best of Both Worlds」「Right Now」「Dreams(アコースティック・ヴァージョン)」まで盛りだくさん。Vic Johnsonさんは、Ronnie MontroseやEddie Van Halen、それにJimmy Pageの代わりをつとめなきゃいけないんで大変だったろうなあ。健闘されています。あ、サミーは全然衰えてません。当時66-7歳だったはずですが。〔完〕