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"Louis XIV, finesse and force......."<Chroming Rose>

第21回「Television」(1)

 パンクも好きです。(ほぼ)70年代モノに限りますが。

 今回取り上げるTelevisionは、ニューヨークを拠点に活動したグループで、中心人物はTom VerlaineVo, Gt)という人。1971年、彼とRichard HellBa)・Billy FiccaDr)はNeon Boysという前身バンドを結成しますが、しばらくして解散。その後Verlaineは弾き語り活動などしていたそうですが、その頃にRichard LloydGt)と知り合い意気投合、Billy FiccaRichard Hellを再び招いた4人組で活動を開始。バンドはこの時からTelevisionと名乗り、19743月に初のステージを踏んでいます。ニューヨークのクラブCBGBを根拠地として活動していきましたが、途中ベーシストがFred Smithに交替(1975年)、そのラインナップでデビューアルバムをレコーディングします。〔この段落のバンドバイオに関してはアルバムMARQUEE MOONの水上はるこ氏の解説によっています。〕

 

<今回の作品>

TelevisionMARQUEE MOON1977

1.See No Evil
2.Venus
3.Friction
4.Marquee Moon
5.Elevation
6.Guiding Light
7.Prove It
8.Torn Curtain

メンバー

Tom VerlaineVo, Gt

Richard LloydGt

Fred SmithBa

Billy FiccaDr

 
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 プロデュースはAndy JohnsTom Verlaine。エンジニアもAndy Johnsですが、”assisted by Jim Boyer”の文字が。今気付いたんですが、ボイヤーさんはBilly Joel70年代末~80年代作品でもエンジニアをやっていましたね。「ニューヨークの人」か。


わざわざエンジニアなんて注目するのは、このアルバムの「音」が驚異的にいいから。それも、近年はやりの「リマスター」や「高音質盤」になったからじゃなくて、どうも最初からそうだったようなんです。わずかに入っているキーボードをVerlaineが弾いているほかは、4人が各々の持ち楽器を演奏しているばかりのシンプルなものなんですが、ドラムやベースの音の生々しさ、ギターの重ね方の絶妙さなど、本作を上回る作品にはほとんどお目にかかったことがありません。


 それは別としても、本作は楽曲・演奏共に完璧というしかない神がかった一枚なのですよ。全曲Tom Verlaineの作詞作曲。1曲目は、ツインギターの効果が見事に生かされた彼ら流のドライヴィングナンバー(Ramonesみたいに疾走してるんじゃないんだけど)。Ficcaさんのハイハット&タム遣いは繊細で、凄く憧れるけどわたくしのようなガサツな者には真似ができないなあ。ハードロック的な手数の多さとはちょっと違うんですよね。あとこのアルバム、ブックレットに「ギターソロをどっちが弾いているか」ちゃんとクレジットがあるのですよ。この曲はRichardが担当で、もともとオールド・ブルーズマン(Elmore JamesMagic Samなど)を敬愛していたという彼らしい、オーソドックスながらメリハリのきいたソロが聴けます。


 ミドルテンポでやや明るい曲調の2曲目。二曲聴いてくると、Verlaineの高くて細いヴォーカルも耳になじみます、かね。ギターソロはTom。この人はRichardとは対照的に、通常のスケールにはこだわらず印象的なフレーズを繰り出すタイプ。


 あまり結び付けて語られてるのを見たことがないんですが、わたくしの感覚だと、Televisionの「音」って、XTCのと似てる気がするんですよね。XTCの前身が「Helium KidsKidz)」だったから“希ガス仲間じゃん”とか言っている……わけでは必ずしもないのですが、「ツインギターの様相」「エンジニアリングへのこだわり」なんかがね。Tom VerlaineRicgard Lloydの異個性ギター組は、XTCAndy PartridgeDave Gregoryのそれに該当するし(Daveはオーソドックスな名手、Andyはちょっと変わったフレーズを好む)。XTCは初期から中期にかけて、一緒にやるプロデューサーには「音作り」を専ら要求していましたし(おかげでDRUMS AND WIRES』『BLACK SEA辺りは80年代を代表するといっても差し支えない先鋭的サウンドに)。Televisionの「Venus」を聴いていると、そこはかとなくXTCの「The Statue ofLiberty」(石像だから?)が浮かんできたり、ね。この辺のこじつけに同意してくれる人ありや否や。


 さて、アルバム3曲目は、繰り出される諸リフと合間の妖しげなオブリが印象に残るロックソング。「摩擦」っていうタイトルにふさわしく、何かが引っかかって擦れてるようなギターソロ(もちろんTom)が不穏。


 さて、4曲目が10分以上ある大作「Marquee Moon」。ちょっと調べてみると当時これはシングルカットされていたみたいです。最初の3分強が「パート1」としてA面に、残りの6分ちょっとが「パート2」としてB面に……っていう、King Crimsonの「The Court of the Crimson King」バリの荒技。こちらは、プログレじゃないんですけど、間奏からが凄く長いんですね。そもそも、冒頭のダブルギターリフから完璧。さっき言ったXTCやら、80年代のKing Crimsonやら(Robert Fripp & Adrian Belew、「Frame by Frame」とか)を彷彿させる鉄壁のコンビネーション。ベースが裏っ側を支えてドラムが全体を転がしてるから停滞なく進行していきます。


ギターソロも聴きどころで、二度目のサビの後はRichardが担当、流麗なフレージングを聴かせます。再び歌に戻ってから三度目のサビの後はTomの長いソロ。初めはたどたどしい単音弾きから入るのですが、だんだん――ちなみにこの背後でのドラムが超絶――確信に満ちたような妖しいフレーズの洪水に。この演出は、あえて暴断言しよう、Paul Butterfield Blues Bandの「East-West」(1966)の影響を受けていると見た!!PBブルーズ・バンドは、Elektraレーベルの先輩だしさあ、Lloydはブルーズマニアだから知ってるはずだしねえ。「East-West」っていう曲(未聴の人は聴いてくださいいますぐに)も13分以上ある長い曲なんですが、後半はずっとMichael Bloomfieldのロング・ギターソロ、それも(当時の感覚で)“東方Eastふう”のスケールを大々的に導入した不思議なものだったんですよ。似てるよ、やっぱり。どうでしょう、この発見(?)。


楽曲はその後、全パートが一体となってクライマックスを迎え、歌に戻って終わります。当時も今も人気の曲で、往年のライヴヴァージョンを聴くと、イントロだけで観衆が「ワアーッ」となってるのがわかります。ちなみに、ライヴだと15分近くになる。一口にニューヨーク・パンクといっても、「150秒」のRamonesの魅力も歓迎されれば、「15分」のTelevisionも受け入れられてたということなのですネ。

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5曲目「Elevation」は、やや暗めに始まるミッドテンポ曲、サビ向かって緊張感が高まる構成。メインとなって曲を引っ張るのはベース。Aメロの後のきめ細か過ぎるほどのドラム(ハイハット)。それでいて他のパートを決して邪魔していないのですから、見事なリズムセクションとしか言いようがないですなあ。またまた引き合いに出しますが中期XTCColin Moulding &Terry Chambers)とか、It BitesDick Nolan & Bob Dalton)とか、コレに匹敵する連中は多くはないですよ。泣きのギターソロはRichardのもの。

6曲目は一転してメジャー調の(比較的)爽やかな曲。「導く光」を求め歌うTomの声は心なしか穏やか。ピアノが入ってメロディアスに歌われるので、何とはなしにビートルズっぽい感じも。素朴で美しいギターソロはRichard


軽やかに始まる7曲目「Prove It」。歌のサビ周辺のstop & go “♪prove it!”が印象に残ります。明るく楽し気に聴こえますが、歌詞はサビが「証明せよ」で、曲の終わりに「一件落着だ(The case is closed.)」とあるので、なんだかよくわからない。だいたいにおいて、Tom Verlaineさんの詞はちょっと聴いたり見たりしただけでは何が言いたいのかよくわからない象徴度の高いものが多い。まあ、本名のThomas Millerが普通すぎるってんで「フランスの象徴派詩人ヴェルレーヌにあやかって」“Tom Verlaine”と名乗った人(であり、詩人PattiSmithの友人でもあった人)のことだから、「詞・詩」に人一倍こだわりがあったとしても驚くところではありませんが。


最後の8曲目がまた強烈な印象。イントロで太鼓が長めのロールを奏でたかと思うと、「てんてんてんてん、てれれれれー」(平仮名で書くとあほみたいだが)という「演歌かなんかかよ?」Or「サスペンス劇場の始まり?」みたいなギターフレーズが鳴り響くのです。「引き裂かれたカーテン」なんていうタイトルも往年のサスペンスものを思わせますが……例によって歌の内容は難解。ギターソロもVerlaine節全開で、聴いていると陰鬱な気分に。後奏の長いギターソロもすごいんですが、だんだん上昇していって高い音域でフレーズを弾いてたかと思うといきなり低音弦に跳ぶ(625秒当たり)のでギョッっとさせられたりも。最後の最後まで聴き手に油断を許さない音作り。前述の解説(水上氏)中にTom Verlaineの「このレコードは、できる限り大きな音でかけてほしい。」という発言が紹介されていますが、徹頭徹尾こだわりぬいた自信作だったのでしょうね。(続く)