DON'T PASS MUSIC BY

"Louis XIV, finesse and force......."<Chroming Rose>

第19回「Robert Johnson」(1)

<思い出話から>
 皆さん、ブルーズはお好きですか?僕は好きです。一番好きなアーティストは、John Lee Hookerですね。もう、この人の作品は必ずチェックしてしまうのですよ。他にも偉大なブルーズマンは数多いですが、この人は弾き語りもバンドスタイルも個性の塊で……とりつかれると離れられません。この人が亡くなった時は、『朝日新聞』にも詳しい訃報が載ったのですが、その切り抜きはいまも持っております。


 ところが、最初にブルーズという音楽にはまってしまったのは、もっと古い音楽を聴いたためでございました。「カントリー・ブルーズ」などと称される1920-30年代のもの(まだ電気楽器はほとんど使われない)に妙に心惹かれた時期は長く、その後しばらくして“戦後ブルーズ”も聴くようになった次第で。そのきっかけとなったのが何を隠そう、今回のRobert Johnsonさんなのであります。


 もちろん、当時ただの高校生であったわたくしが、いきなり渋いカントリー・ブルーズにのめりこむわけはないのでありまして、最初はもっとポピュラーな音楽を聴いていたのでありました。当時実は、Eric ClaptonUNPLUGGEDが異常なほどブームとなっていたのであります。わたくしの周辺の中学生の、特に洋楽マニアではないような連中まで「アンプラグド、アンプラグド」言っていたものです。本当に。わたくしも、なけなしの小遣いで輸入盤のECUNPLUGGEDを購入しまして、ひたすら聴いたのですが、Ericのヒット曲の「Tears in Heaven」「Layla」以上に、「Before You Accuse Me」とか「Rollin’ and Tumblin’」とかいう(当時は当然オリジナルを知らない)古風な曲に耳が行きました。


そして、クレジットをみると2曲、“Robert Johnson”という人の曲がいずれも弾き語りで披露されている――「Walkin’ Blues」と「Malted Milk」――のですが、これがどうにも気になるのでした。“Robert Johnson”?どこかで聴いたような。クラプトンが昔やっていたCreamの「Crossroad」という曲の作者じゃなかったかな。でもあの曲はけっこうハードな曲だったけど……?一体Robert Johnsonとは何者なのだろう、とね。


そうしてしばらく経ったころ、地元の駅の近くにあった(今は無き)ヴァージン・メガストアCD売り場で、Robert JohnsonTHE COMPLETE RECORDINGSというボックス(輸入盤)を見つけたのです。縦長のしっかりした箱にCDが二枚収まって、中にはブックレットが入っている模様……「これだ!」と思い、やはり小遣いをはたいて買って帰りました。ワクワクしながら箱を開けると、縦長のブックレットの表紙には(外箱と同じく)「スーツで決めてギターを構えた男」の姿。ブックレットをめくると、「くわえタバコでこっちを向いている同じ男」の写真。おおう、この御仁がRobert Johnsonか!(どうやら、現在まで残されている彼の写真はこの二枚だけのようです。)
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まずは音を聴いてみないと!CDプレイヤーにディスク1を入れます。再生。ゆっくり歩くようなスローなテンポでギターが鳴り、途中から(思っていたよりかなり)甲高いヴォーカルが響きます。へえー。もっとドスのきいた感じかと思ったけどねえ。この「Kindhearted Woman Blues(Take1)」は、サビで歌がファルセットになったり、珍しくギターソロがあったり、けっこういろいろな要素が盛り込まれている曲なんですが、最初聴いたときはちょっと地味に思えましたね。これよりも、3曲目の「I Believe I’ll Dust My Broom」のギターの三連フレーズがインパクトあったし(この当時小生Elmore Jamesを知らず)、4曲目の「Sweet Home Chicago」のウォーキングする典型的なブルーズ進行にロックっぽさを感じたりしたものでした。「Crossoroad」も聴いてみましたが、まあびっくり。Creamのはまったく別の曲じゃないか。歌詞は同じだろうけど。


でも不思議なことに、「つまらん」とは思わなかったんですよね。2941トラック、これで「コンプリート」(それしか残された音源がない)ということですが、曲想も歌の中身も豊富で、飽きなかったのです。(同じ曲のテイク違いは、テンポやフレーズが大幅に違っていたりして、別の曲のように楽しめる。)


ブックレットに書かれていることも、頑張って読みました。英語の細かいニュアンスまで汲み取れたかは心もとないですが、Johnsonの伝記的事実としては、1911ミシシッピ生まれであること、ギターの腕前を驚くべき速さで身につけたらしいこと(それで、「十字路で悪魔に魂を売った」とかいう伝説ができたようですが)、1936-37年にレコーディングを行ったこと、人妻と関係したため最後は毒殺されたということ、がわかっているくらいのようでした。もちろん、同時代人の証言というのもあって、「アイツはホントに凄かった」っていうミュージシャン仲間の言葉もあれば、「あれはごくつぶしじゃあ、畑で働きよらんかったわい」という親族の言葉もあります。ブルーズ界隈では半ば神格化されていますが、南部の若者(黒人)として確かに生きた人であったわけで、この人の人生はどこか後世の人の関心をひくものであるようです。(Robert Johnsonの伝記や研究本はたくさん出ていますが、日暮泰文さん『ロバート・ジョンスンを読む』Pヴァインブックス、2012年)は凄い一冊です。バイオグラフィの謎や、歌詞の内容についてかなり掘り下げており驚かされますよ。)