DON'T PASS MUSIC BY

"There is no wrong or right, and nobody's talking to anyone......"<Love Sculpture>

第14回「Montrose」(1)

 さあ、アメリカン・ハードロック最強アクトの一角、Montroseです。

 Montroseというバンドは、Ronnie MontroseGt)が自らのやりたいロックを追求するために結成したグループ。Ronnieはすでに、Van MorrisonTUPELO HONEY1971)やEdgar WinterTHEY ONLY COME OUT AT NIGHT1972)に参加して名をあげていました。当時すでにアメリカ西海岸の「名ギタリスト」だったわけですが、「ハードロックをやりたい」(当時の彼のフェイヴァリットはLed Zeppelinだったそうです)との思いから、同じく西海岸の若手を集めてMontroseを立ち上げました。他のメンバーはSammy HagarVo)、Bill ChurchBa)、Denny CarmassiDr)。


 バンド結成当初、Ronnieは「Rock the Nation」を、Sammyは「Bad Motor Scooter」をそれぞれ持ち寄って互いに意気投合し、さらには「Space Station #5」ほかを共作するに至ります。そうしてできたのがファーストアルバムMONTROSE(邦題『ハード★ショック!』)でした。(個々に曲を書ける面々が、さらに共作してデビューに至るっていうケース、確かBad Companyもそうでしたね。元FreePaul Rodgersと元Mott the HoopleMick Ralphs。ソングライター同士の間でマジックが働いた、というやつでしょうか。)MONTROSEのプロデュースはTed Templeman――後にVan Halenのプロデューサーもつとめる人――ですが、彼はRonnieの「ストレートなロックをやりたい」というヴィジョンを容れて、シンプルで力強いサウンドづくりに貢献しました。


 このアルバムについては(ついても?)、四の五のいうよりまず聴いてもらうのがいいでしょう。全部で30分強ですしね。
 
<作品紹介>
MontroseMONTROSE1973
  1.Rock the Nation
  2.Bad Motor Scooter
  4.I Don’t Want It
  5.Good Rockin’ Tonight
  6.Rock Candy
  7.One Thing on My Mind
  8.Make It Last
イメージ 2

メンバー
 Ronnie MontroseGt
 Sammy HagarVo
 Bill ChurchBa
 Denny CarmassiDr
 
イメージ 1


*左から、Denny,Bill, Ronnie, Sammy

 まさしく「四人」で出せる音を追い求めた、装飾の少ないしかし骨太なロック。Ronnieの繰り出す名リフ、Sammyの熱い歌唱、Bill’Electric’Church(ステージではそう紹介されていた)のダイナミックなベース、そして8ビートマスターDenny Carmassiのドラミング。ちなみにこのアルバムにはバラードは存在しません。速い遅いはあれど、「ロックしてやるぜ」の心意気の途切れぬまま走り続ける32分間。


 1曲目はRonnie作の代表曲。メインのギターリフがかき鳴らされると同時にカウベルが鳴り、Dennyのドラムビート、Billのベースが加わったところへSammy登場。ギターリフ自体はかなりシンプルなんですが、よく聴くと「スクエア」ではなく、かすかにスウィングしていますね。RonnieDennyのビート感の相性はバッチリで、なんとも心地よい。(76年の第一次解散までDennyはずっとドラムの座にいましたし、後にGammaというバンドでも一緒でした。)もちろん、凄いのはSammy Hagarの歌も。ややメロディーラインをつかみにくい(カラオケとかでやろうとすると難しいのですよ)のですが、多分それは彼による各フレーズの末尾の運び方が独特だからでしょうか。あと、あの物凄いシャウト。終盤の「Rock the, rock the ,rock the, rock the ,nation~~~」ていうところなんか鳥肌モノ。


 2曲目は、Sammyがすでに作っていた曲だそうですが、イントロとアウトロの「バイクの音」はMontroseとしてリハーサルしているときに出来たそうです。なんでも、Ronnieがスライド・ギターをいろいろ試していたら、ぎゅわーんという音が出てきて、プロデューサーとエンジニアから「そのまま続けろ!曲のイントロになるぞ!」と煽られたんだとか。で、そのあとにドラムの刻むイントロが入り、ミッドテンポのAメロに。よく聴くとBillのベースラインも格好いいぞ。Bメロに入ると暴走し始めるところも「Bad」で良いですねえ。Sammyのエネルギッシュな歌が素敵ですが、彼自身お気に入りのようで、ソロ活動時にもステージでよく取り上げています。この曲は、英国の音楽番組「The Old Grey Whistle Test」出演時の映像(1974)が観られるので、ぜひご覧ください。野心に満ちた若きバンドの雄姿が拝めます……ドラムファンとしては、動くCarmassi先生の姿が鑑賞できるだけで感涙。


 3曲目は、冒頭に不思議なサウンドが入っています。Ronnieがスタジオでフィードバックやら何やらいろいろ試していた時に出来たサウンドを処理したものだそうですが。曲本編は、疾走感満点のハードブギー。1分頃のSammyのシャウトは、The Whoの「Won’t Get Fooled Again745秒辺りのRoger Daltreyのシャウトを手本にしているに違いない!(SammyVan Halenのライヴ盤LIVE:RIGHT HERE, RIGHT NOWで「Won’t~」のカヴァーを披露しているのだが、445秒のシャウトはこれとおんなじだあ。)さてと、「Space Station #5」は、終盤の加速につぐ加速も面白いですね。ごくシンプルなロックを基本としながらも、ちょっとずつ実験的なことも試さずにいられないRonnieの個性があらわれていましょう。(ソロや後年のバンドGammaではそれがもう少し強く出てきます。) この曲も本人たちにしてみると会心の出来だったらしく、Sammyはやはりソロのライヴで、Ronnieは晩年の再結成Montroseでそれぞれやっています。(Ronnieの回想:「サムと共作した中でも特に楽しかった曲のひとつ。」)
 実はRonnie Montrose2012年に亡くなってしまったのですが、その追悼コンサートCONCERT FORRONNIE MONTROSEDVDあり)でも、Ronnieの代役をJoe Satrianiとした「再結成」Montroseがこの曲で最後を締めくくりました。


 軽快なシャッフルが快い4曲目に続いて、Elvis Presleyのヴァージョンも有名な「Good Rockin’ Tonight」へ。オリジナルはRoy BrownR&Bソングですが、Montroseのハードロックヴァージョンは後にMichael SchenkerTracii GunsらのContrabandや、NWOBHMの名バンドDiamond Headにカヴァーされております。この曲なんかを聴いていると、70年代のHRバンドと90年代以降のHMバンドの違いは「スウィング感」の有無にあるんじゃねえかなと思えますなあ。Deep PurpleLed Zeppelinも、Black Sabbathだって、打ち込みじゃ再現できんようなビートでしたものねえ。そいで、さっきからわたくしわあわあ言っておりますが、Denny Carmassi先生はそういった温かみのある8ビートの達人なのですよ。もっと皆の衆に評価してもらいたいドラマーだなあ。


 6曲目は、バンド全員が作曲にクレジットされています。ジャム・セッションで出来たのでしょうか。(Ronnie曰く:「ベーシック・トラックをみんなでライヴ録音して、私のソロ・パートは別のスタジオでオーヴァーダブした。」」)Montrose屈指のヘヴィ・ナンバー。重量感あるドラムから始まり、弦楽器がリフを重ねるあたりは、Led Zeppelinを手本としたんでしょうかね。このパターンを、わが最愛のRiotが「Overdrive」で継承していると見ましたよ。さて、この曲もSammyがソロでよくやっているほか、Lita Ford(元Runaways)がライヴで披露しておりますぞ。Ford版のドラムは名手Jimmy DeGrasso(一時期Megadethに居た)で、安心のクオリティ。


 再び軽快なシャッフルの7曲目を経て、ラストはSammy作のミドルテンポ・ロッカー「Make It Last」。この曲では、ギターのオーバーダブが効果的。スライドが滑り込んできたり、別チャンネルからリフが重ねられたりとかですね。Dennyのどっしりしたドラムも見事。
 
 あっという間だったでしょう?よく「捨て曲のない名盤」ということを言いますが、これのその一つに含めてやってくださいな。

 バンドはこのあとベーシストがAlan Fitzgeraldに交替して、PAPER MONEYを発表。The Rolling Stonesの「Connection」のカヴァーやバンド初のバラード「We’re Going Home」(歌うのはRonnie Montrose)、インストの「Starliner」、そして必殺の名曲「I Got the Fire」(邦題:「灼熱の大彗星」)を収録したバラエティ豊かな作風となりましたが、Sammyはこの後脱退。

 派手なギターリフから疾走する「I Got the Fire」は、Ronnie自身のちに結成したバンドGammaでも演じられたほか、初期のIron Maidenがステージでやっていたり、わが最愛(くどい)のRiotがデビュー前に地下室でリハーサルしていたりします。(「Riot Ver 1.1」で検索すると、動画サイトで聴けたり……)わたくしは以前から、「初期Riotは、“Deep PurpleRainbow風”ってよくいわれるけどちょっと違うな、そういう曲=「Warrior」=もあるけど、バンドのテイストはDerringerMontroseだろ!」と思ってまいりましたが、それがこの発掘音源で証明されたと思っております。Riot初代ヴォーカルGuy Speranzaの、どことなく歌メロが取りづらいけれど快活な歌いっぷりも、Sammy Hagar直系のものでしょう。初期Riotのライヴ音源と、初期Montroseのライヴ音源を聴き比べると(例えばMontrose「Rock the Nation」とRiot「Swords and Tequila」)、よーくわかるのですよ。Riotアメリカン・ハードロックの最良の部分を継承しつつ、英国風のドラマティックさも取り入れていたのだ!……脱線しました。これ以上はRiotの回で述べたく。
 
 バンドMontroseは、Sammy脱退後もBob Jamesというヴォーカリストを入れて活動を続けます。Jamesという人は、Sammyみたいな規格外のところはありませんが、ブルージーな歌に合うなかなか良い声を持っていました。彼が参加して一枚目(バンドトータル三枚目)のWARNER BROS. PRESENTSMONTROSE!は、まごうことなき名盤です。専任のキーボーディストJim Alcivar(この人も、RonnieGammaに続けて参加します)を迎え入れたため、Zeppelin風からPurple風へややシフト。冒頭の疾走曲「Matriarch」や締めくくりの高速「BlackTrain」は最高のハードロック。間には、じっくり聞かせる「All I Need」、Eddie Cochranの快活なカヴァー「Twenty Flight Rock」(Ronnie::「私はエディ・コクランの大ファンだった」)、7分近い大作(ヴァイオリンも入って、ちょっとKansasっぽい)「Whaler」、跳ねるリズムが楽しい「Dancin Feet」、軽やかで爽快なロックナンバー「O Lucky Man」、Jimmy Page風アコギインスト「One and a Half 」、ピアノとスライドギターが印象的なヘヴィナンバー「Clown Woman」……って全曲じゃないの。捨て曲なし!MONTROSEの次にはぜひこれを聴いてい下され。
 
 この後に、若干のメンバーチェンジ(ベースがRandy Jo Hobbsへ。ちなみに、Alan Fitzgeraldは少し後に、Night Rangerのキーボーディストとして活躍します)。Jack DouglasのプロデュースでJUMP ON ITを出しますが、オリジナルMontroseはここでいったん解散へ。Ronnieはソロ活動やジャズドラマーTony Williamsのバンドへの参加を経て、新バンドGammaを結成します。3枚のアルバムを出した後、一時的Montroseの再結成(とはいえ、メンバーは以前と全く異なる)、再びソロ活動、Gammaの一時再集結(こちらは全盛期のメンバーでやった)、またもソロを経て、ニューMontroseBurning RainKeith St.JohnVo)ら若手を従えたグループ)で動いていた……のですが、数年前に、亡くなってしまいました。Ronnieの、Montrose以降のキャリアについてもどこかで触れたいものです。わたくしにとっては“三大ギタリスト”や“リッチー”“ゲイリー”“マイケル”よりも気になる存在だったので。
 
 他の面々はというと。Sammy Hagarはソロで成功を収めたのち、Van Halenに入りましたね。MontroseVan Halenはデビュー作のプロデューサーが一緒だったり何かと縁がある。Montroseの面々でいまも一番精力的に活躍しているのがSammyでしょうね。いろいろなプロジェクトを立ち上げたりもしていますが、個人的に面白かったのは、Alice Cooperのライヴ盤づくりに協力したこと。A FISTFUL OF ALICEっていうアルバムは、Sammyの持つクラブCabo Waboで収録され、Sammy自身も1曲目の「Schools Out」でリードギターをつとめているんだが……これが上手いんですわ!Van Halen時代も、「One Way To Rock」なんかでEddie Van Halenとツインリードを披露はしてたけど、ギタリストとしてだけでもやっていけるんじゃないの?面白いもので、「いやあ、RonnieとかEddieと一緒にやると、“どうやったって自分は二番手だよな”と思っちまうんだよな」といいつつ、彼は必ずバンドにスーパーギタリストを入れるんですよね。70年代ソロ時代の相棒Gary PihlBostonのメンバーだし、最近やってたChickenfootJoe Satrianiリードギターだしね。聴くほうとしては楽しみ二倍で嬉しいですけど。
 
 Denny Carmassiは、70年代にSammy Hagarのサポートについたり、80年代初頭にGammaのメンバーになったりしましたが、80年代後半からは長期間HeartAnn & Nancy Wilson姉妹の)に在籍し、David Coverdaleとも仕事をしたことがありました。最近どうしているのかなと思っていたら、例のRonnie追悼コンサートの映像でお姿を拝めましたよ。見た目は歳相応でしたが、必殺の8ビートは健在でした。嬉しい。
 
 
 Bill Churchは、やはり70年代後半から80年代前半のSammy Hagarバンドに在籍していましたが、その後はあまり音沙汰ありませんでした。Denny同様、Ronnie追悼コンサートで少しだけ登場したのですが、誰よりもニコニコと演奏しているのが印象的でした。もちろんベースプレイもお見事