(続き)
あんまり余計なことをいわないようにしてもこんなに冗長饒舌になってしまう……ジャッキー・チェン恐るべしでありますが、わたくしと同じかもう少し上の世代にとってはやはりこの人は特別な存在なのですね。最後に一つ珍品をご紹介。日本のロック(特にヘヴィメタル)界で活躍する面々が「ブルース・リーとジャッキーチェンの映画の音楽」にトリビュートを捧げたアルバムが存在するのですよ。ユニット名「BLUE-3」なんていうと冗談みたいですが……リーとチェンの代表作の楽曲を、強引にヘヴィメタルにアレンジして演った、という。中心人物は元Gargoyle・元Animetal・現Volcanoの屍忌蛇(しいじゃ)氏、彼が全編ギターを弾き、YouthquakeのAKIRA氏・GargoyleのTOSHI氏がベース、Gargoyle(現在はクロマニヨンズにも)のKATSUJI氏がドラムという演奏陣。そこにAionのNOV氏、YouthquakeのHiyori氏、ジャッキー“NOB”珍氏、そしてゲストで大槻ケンヂ氏がヴォーカルで参加と。こういう企画が許せるかどうかは人によると思いますが、本人たちが大真面目にやっているので、わたくしはアリだと思ひます。パワーメタルにされた「死亡の塔」、どうにもMichael Schenker Groupの「Assault Attack」を思わせる二拍三連の「プロジェクトA」。オリジナルは四人囃子(国産ロック/プログレの名バンド)がやっていた「拳法混乱(カンフージョン)」をハードポップ風に爽やか(?)めにやるかと思うと、えらくヘヴィに仕上げられた「カンニングモンキー」。「スパルタンX」は割とストレートにカヴァーしているかな……と思うと強引なギターソロが微笑ましい。「燃えよドラゴン」をやった後の、最後のオリジナル曲「メタル・ドラゴン」で大槻氏が登場。「超絶プレイの連続まわしげり!!!」(オビより)
こういうばかな(褒めている)ことを全力でやらせてしまう往年の香港映画は素敵だったなあ。
<今回取り上げた作品>
(2)成龍他『警察故事Ⅲ――超級警察電影原声帯』(1992)
『ポリス・ストーリー3』のサウンドトラック。
90年代のジャッキー・チェン映画関連作を集めたらしいCD。『レッド・ブロンクス』の主題歌や挿入歌、『ポリス・ストーリー3』の主題歌(2ヴァージョン)、『新ポリス・ストーリー』予告編主題曲、『ツイン・ドラゴン』主題曲、『酔拳2』主題歌など。「入戯――成龍撮影全記録」という写真ブックレットがついており、「フィルモグラフィ」「ディスコグラフィ」のほかに「慈善事業の記録」「これまでに負った負傷の記録」(!)などが載っている。
(4)譚詠麟『暴風女神LORELEI』(1985)
映画『サンダーアーム』に出演し、ジャッキーの友人/兄弟分をややコミカルに演じた譚さん(アラン・タム)は、香港ではもはや大御所の大歌手。1985年のこのアルバムは、彼のディスコグラフィのうちではロック色の強いもののようです。クレジットを見ると、作曲では芹澤広明氏、ギターでは北島健二氏など多数の日本人がバックアップしていた模様。さらにいうと、わたくしの持っているCDは「Made in Korea」と書いてある……東アジアではすでに文化的な共同作業はすすんでいたのである。
(4)BLUE-3『METAL DRAGON :Enter the Hong Kong Metal Master』(1998)
プロデュースは屍忌蛇氏&久武頼正氏。久武さんは、かつて「ヘビメタさん」「ROCK FUJIYAMA」にもご出演でした。「アニメタル」を仕掛けたりして、日本のメタルを盛り上げようとされてきた方ですな。あ、このアルバムは律儀にも「dedicated to 李小龍」となっておりますよ。