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どんぱす今日の御膳252

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The Rising Sun「Born To Be Wild」(『BORN TO BE WILD』1969)

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 言わずとれたSteppenwolfの名曲。それを曲としてカヴァーするに飽き足らず、アルバム名にまでつけるという大胆不敵をやってのけたのが、カナダ出身のThe Rising Sun。どうやら実態のあるバンドというよりは、スタジオのみのプロジェクトのようなものだったらしいですね。

 というのも、Steppenwolfの「Born To Be Wild」「Faster Than The Speed Of Life」(こちらはステッペンウルフのセカンドアルバムに入っていた曲)のほかにも、Jimi Hendrixの「Fire」、Arthur Conley「Funky Street」、Cole Porterの「You Do Something To Me」だのといったカヴァーばっかりだからです。60年代末から70年代ってのは、こういうヘンな代物がよく出たんでしょうか。(そもそもなんでお前はそんなヘンなもんを持ってるのだ、というのは措いといてください。)

Primary

 タイトル曲の「Born To Be Wild」を聴きますか。あー、一生懸命オリジナルをまねてるけど、きついねえ。ヴォーカルにはJohn Kayのダンディネスが足りないし、ドラムにはJerry Edmontonのグルーヴ感が足りないし、ギターは雑なサイケ調。おまけに録音状態が“ガレージかい!”ってレベル。

 ただまあ、ちょっと擁護してあげると、この曲はオリジナルが素晴らし過ぎて、カヴァーがうまくいったケースはほとんどないのよ。米国の名バンドBlue Öyster Cultはライヴでもよくやってたけどオリジナルをなぞる程度だし、英国のハイパーブギーバンドSpiderのヴァージョンも性急すぎるし、わが最愛のRiot『NARITA』所収版も余裕に欠けるし、Ravenとウド・ダークシュナイダーのスピードメタル版は笑えるけど(ジョン・ギャラガーとウドが徹頭徹尾叫んでるから)出来は別に良くないし。

 

 じゃあ、もう1つのウルフ・ナンバー「Faster Than The Speed Of Life」はどうかな?こっちはオリジナルもジョン・ケイは歌ってなくて、ドラムのジェリーが(少し線の細い)ヴォーカルをとっていたからね。おお、歌の方はさほど違和感ないかもな。ドラムが不安定でジェリーの足元にも及んでいないがな!(私はジェリー信奉者)

 

 最後に「Fire」もいっとこうか。まずこいつは録音がキッツイぞ。風呂場で録音してんのかい?っていう残響。遺憾ながらこのバンドのドラムにミッチ・ミッチェルのドラミングを襲うのは無理があり、ギターやベースにしてもペナペナでグルーヴが無い。終わり方も唐突だしなあ。

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 というわけで、ケチばかりつけてしまいました。中古とはいえ自腹で買ったんだから、このくらい言わせてもらってもいいよね。もちろんみなさまにはお勧めはしませんが、「ロック文化」の裾野への広がりを認識する一助にはなるでありましょう……とそれっぽいことを言い置いて去ろう。