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Stevie Wonder「Superstition(Vocal1)」(『SUPERSTITION:MULTITRAXX SERIES Vol.1』)
※☝こちらは如何に紹介するヴァージョンとは別(完成版の「迷信」)
どうやらこれは非公式作品のようなのですが、あまりに興味深かったので……
スティーヴィー・ワンダーの名曲「Superstition」(迷信)は皆さまよくご存じだと思います。決してロックマニアではないわが老母(っていうと怒られるな……)もこの曲がお気に入りだったもので、私も早いうちから聴いていたのですが、確かにかっこいいですわな。ドラムも本人が演奏してるなんていうのはだいぶ後から知りまして、スティーヴィーの天才ぶりには驚愕したものですが……
『SUPERSTITION:MULTITRAXX SERIES Vol.1』という二枚組は、この名曲のパートごとの音源が細かく収録されている、謎のアイテム。全部同じ曲ですから、16トラック全てが5分34秒ですが、「Kick」と題されたトラックはバスドラとスネア“だけ”、「Ovhead Hi-Hat」と題されたトラックはハイハットとスネア“だけ”、「Clavinet」はクラヴィネット“だけ”、「Horn」はホーン・セクション“だけ”……名曲を分解するとこうなる、なんていうのは初めて聴きました。
で、聴き通して最もインパクトがあったのが「Vocal」というトラック(1・2の二つがある)。この曲、クールなクラヴィネット・サウンドやダンサブルなビートに耳が行きますが、「歌メロ」がこんなに!こんなに!独創的で凄かったとは。ヴォーカル「だけ」抜き出して聴くと、そのメロディラインの特異さが際立ちます。ソウルフルなコブシ回し、ロック的なアグレッションのつけ方、スムースなラインの流し方……まったく天才的というほかありませんでした!!何をいまさら、という感じですが……。
ハードロック業界でも「スティーヴィー大好き!」っていう人はそれなりにいるんですよね。例えば元Deep PurpleのGlenn Hughes氏とか、歌いまわしもスティーヴィー風だったりして、「この人あ歌うめえ」とずっと思っていたのですが。
これは別にグレンを貶める意図は全くないのですが、彼のうまさはあくまでヴォーカル・ワークの巧みさの次元(凄いパワーの声で高い音を歌いこなしたりできるという意味)にとどまるのですよね。まあ、それだけでも常人離れしているわけではあるのですが……Stevie Wonderは歌メロの「構築」そのものを凡人には思いもよらない高次元でやってのけているので、創作者としては一層圧倒的なのです。
まあ、こんなヘンな音源集を耳になさる機会はあまりないかもしれませんが、オリジナルの「迷信」の歌メロをよーく聴いていただけると、私の言いたいこともわかっていただけるのではないでしょうか。スティーヴィー“ビリー・ジョエル曰く「彼は一日に一曲作るらしいよ”ワンダー天才すぎる、と……