Snafuは、1976年に解散します。そこでBobby Harrisonはこんどは、Joe Jammer(Gt)やTony Stevens(Ba)らとNobody’s Businessを結成します。Tonyは60年代末にSavoy Brownに加入、さらに同バンドの仲間Dave Peverett・Roger Earlと結んでFoghatを結成した人。あ、この後Maggie BellとMidnight Flyerもやるの?するってえと、私この人のプレイしてる作品、結構持ってることになりますね。
またもボビーから話が逸れた。彼らはアルバム『NOBODY’S BUSINESS』を制作しますが、発売は何と日本オンリー(1978年)という事態に。ボビー、どんだけ英国音楽界と相性がわるいの?
結局「ビジネス」は失敗し、あっさりバンドは解散となりました。……が!残されてしまったこの作品、良い!個人的にはボビー関連作の中でベストといいたいぐらい良い!のです。邦題が『超絶のニュー・マシーン』ていうブッ飛んだものだったことに惑わされてはいけません。
Nobody’s Business『NOBODY’S BUSINESS』(1978)
- Bleed Me Dry
- Tell Me You Love Me
- Losing You
- Cut In Two
- Living Up To Love
- Looks Like I'm In Love
- Unsettled Dust
- White Boy Blue
- Doing The Best I Can
- Nobody's Business
<メンバー>
Bobby Harrison(Vo, Perc)
Joe Jammer(Gt, Vo)
Tony Stevens(Ba, Vo)
Jerry Frank(Dr, Perc, Vo)
もうね、一曲目の「Bleed Me Dry」が完璧なのよ。ダンサブルなビートにJoeのスライドが絡むでしょ、そこに暑苦しいボビー声ですよ。些かデフォルメが過ぎるかもしれないけど、ボビー流ファンキー・ロックがここまでキャッチーに表現されたことはなかったのでは。私が持ってる再発盤は2枚組で、二枚目はボーナス映像集(DVD)なんですが、演奏シーン(PV?)が観られるのですよ。長髪髭面のボビーが歌いまくってるの。最高。ひょっとすると、この映像のインパクトのせいで、私ゃNobody’s Business贔屓なのかもしれないなあ。(Youtubeでも観られるようですぞ。)
これと双璧をなす名曲が、やっぱり映像もある「Cut In Two」。ヘヴィなボトムに押し上げられる歌がまず熱い。キャッチーなリフはディスコ的なサウンドをイメージしているのかもしれなくて、そういうサウンドはふつうなら私の好みの範囲外なんですが、この曲に関してはボビーの――コレを聴くと、Snafu時代はだいぶおさえていたんだなあと思う――ホット・ヴォーカルのお陰で楽しめてしまう。カウベルがポコポコ入るのも可愛いし。ファンキーなソウル・ロックとしては実にイケてると思うのですがどうでしょう。
先に二大フェイヴァリットをあげちゃいましたが、他ももちろん良いのよ。海辺っぽい(?)バラード「Losing You」、16分ビートのダンサブルな「Living Up To Love」、ハード・シャッフリング・ブギー「Looks Like I’m In Love」、なんて風にそれなりにバラエティに富んでいるしね。録音の音質こそ“素晴らしく良くはない”けど、ボビーの歌を前に押し出す感じはあるし。
スロウでブルージー(憂い感ある)な「Unsetteled Dust」におけるボビーの朗々たる歌唱は見事だし、途中(間奏)からギアを入れて加速し出すような仕掛けも面白い。「White Boy Blue」なんかでは、ジョーのスライド(ギター)捌きも聴ける。70年代のHR選手は、Jimmy PageやRitchie Blackmoreといった大物も含め、スライド・プレイの一つや二つこなすもんなんだなあ。
80年代以降のHMギタリストとの違い(識別ポイント)はこの辺にあったりして。ちなみに、私の最愛のギタリストMark Reale(Riot)はスライドを弾いた人なんで、「70年代」の人です(?)。「White Boy Blue」は、Led Zeppelinっぽさがあるかなあ。Joe Jammer氏はLed Zeppelinと実際に縁があった人で、ツェッペリンのクルーを一時期やってたとか、The Joe Jammer BandとしてLed Zeppelinの前座をやったとか、そういう話がありますね。
「Doing The Best I Can」の幕開けは、Robin Trower風味ですかね。単なる偶然でしょうが、RobinもProcol Harumを抜けた後はソウルフルなヴォーカリストとタッグを組んで米国音楽(ブルーズ)を下敷きにしたハードロックをやっていましたね。あ、ロビンは現役だから、「やってますね」。Nobody’s Businessの方は、ファンキーなビートを強調して、やはりダンサブルに仕上げてます。この辺りのディスコ即応済み、みたいなところは、「たぶん当時は新しくクールで、その後時代が経って逆にダサくなって、2010年代を過ぎて一周まわってまた反対に味が出てきた」んじゃないかと推定。というか、私はこのダサ格好よさにしびれます。
「Going Down」(Don Nix)でも始まるのかというリフから突入するのは「Nobody’s Business」。8分でゴリゴリ押しまくるベースのドライヴ感が凄い。割と力づくで乗せまくっていってジャカジャンと終わるっていう流れも微笑ましい。“♪Ain’t nobody’s business~”
私の持っている再発盤には3曲のボーナストラックが入っています。「Rainbow Bend」はボビーも元気一杯の快活なロックナンバー。「Crucifer」は、ラウドなギターリフが強烈なハードロック。中間でテンポを落としてヘヴィに迫る仕掛けもあり。「Highway」は直線的なドライヴ感が魅力のハードチューン……だけど、途中でディスコ調ビートに切り換わったりもする妙にキャッチーな曲。
盛りだくさんだけど、やっぱりまずは「Bleed Me Dry」と「Cut In Two」かな。何とか探して聴いてみてくださいね。
<続く>