2019年の作品はまだまだございます。
70年代のクアトロ黄金時代を支えたギタリストLen TuckeyとSuziは一時期所帯を持ってまして、子供もお二人いらっしゃるとか。その“息子Richard Tuckey”さんが全面的に母ちゃんをバックアップして作ったのが、現時点での最新作『NO CONTROL』。
(5)Suzi Quatro『NO CONTROL』(USA)
- No Soul/No Control
- Going Home
- Strings
- Love Isn't Fair
- Macho Man
- Easy Pickings
- Bass Line
- Don't Do Me Wrong
- Heavy Duty
- I Can Teach You To Fly
- Going Down Blues
<メンバー>
Suzi Quatro(Vo, Ba, Gt, Perc)
Richard Tuckey(Gt, Cho)
Tim Reyland(Dr)
Jez Davies(Key)
他
いきなり歌と器楽がまとめて飛び出す「No Soul/No Control」、こっちの予想以上にアグレッシヴなロック・ナンバーでスタート。ギターリフのキレもよいのですが、この曲のポイントはキーボード(オルガン)の絶妙な入り方にあり。さすがに年輪を感じさせますが、その分貫禄の増したクアトロ・ヴォイスには敬礼。“♪You can’t take away my soul……”次のヘヴィ・シャッフル「Going Home」ではさらに威厳割増しでございます。
ファンキーな管楽器隊を投入した「Strings」、スティールドラムを組みこんで南国風(?)に仕上げた「Love Isn’t Fair」、70年代からお得意のロッキン・ブギー「Macho Man」(Richardのギターも古典的美学をふまえていい感じ)、ハーモニカも入ってカントリータッチの軽やかな「Easy Pickings」と、曲もバラエティに富んでおります。すべてQuatro/Tuckeyの親子共作。
ピアノとストリングスを入れてお洒落な「Bass Line」(ベース・ソロも有り)は、少しShocking Blue「Venus」を感じさせるところがあるかな。イントロのパーカッション(ボンゴ)はスージー自身が叩いてるんだって。一転してアーシーなブルーズ風ナンバーの「Don’t Do Me Wrong」に入ると、リチャードのスライド・ギターがお出迎え。
管楽器も切り込むハードR&R「Heavy Duty」。“It’s a heavy duty world…….”バックバンドの一体感も素晴らしい。次の「I Can Teach You To Fly」はふたたびのヘヴィ・シャッフルなのですが、こちらは物悲しいメロディのヴァースから哀愁の展開(?)で開放的なコーラスへつなげる意欲的な曲。この手のリズムで一貫させながらメジャーとマイナーを行き来するのってけっこうめずらしいんじゃないかな。そして締めくくりの「Going Down Blues」(邦題「あんたに捧げるブルース」、これだけはQuatro単独作)はタイトル通りのヘヴィ・ブルーズ(とはいえ彼ら流のキャッチーさも勿論有り)。“♪You got the going down blues……”こういう曲は70年代の所謂黄金時代より「いま」こそ説得力があってよいですね。終盤“♪OK, let’s go !”からおお盛り上がりして終わっていくのも素敵。
良い作品でしたね。これはもう、おすすめ。
<続く>