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第53回「内田勘太郎」(6)

 内田さんの『マイ・メロディ』が気に入った私は、次の作品へも手を出します。

 

内田勘太郎トリオ『暴風波浪警報』(2001)

 1.暴風波浪警報

 2.レッド ホット ブルース

 3.銀の路

 4.ロータリーストンプ

 5.チェリー ピンク ブガルー

 6.トオン ダウン

 7.ゆらゆら

 8.終わりのない夏

 9.白い波

 10.潮時

 11.遠去かってく景色

 12.BC通り

<メンバー>

 内田勘太郎(Gt, Vo)

 金城浩樹(Ba)

 氏永仁(Dr)

 

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 前作『マイ・メロディ』にも参加されていた金城浩樹氏・氏永仁氏とのトリオで作られた、事実上のソロ第二作。

 

 私がこれを知ったのは実は偶然。渋谷のタワーレコードをうろうろしてたら、新譜の台に「内田勘太郎トリオ『暴風波浪警報』」ってのが出てて、購入特典として「インストアイベント招待券」がついてたのです。イベントの日は用事を早めに片付ければ来られそうだ……「じゃあ、買う!」ということになったわけで、お店に見事に釣られたわけですね。もちろんイベント(ミニライヴだった筈)にも行きまして、割と近い距離でトリオの演奏を拝見しました。

 

 ジャケットの裏面にうつっているおじさんたちの佇まい(強面!)や「暴風波浪警報」っていうタイトルからしてアグレッシヴなのを期待して買ったのですが、その期待はいい意味で裏切られました。前作よりはロック・ブルーズ色が強いのは確かだと思うんですが、単純にゴリ押ししてくるっていうのじゃなくて、音の圧力の掛け方と「間」(駆け引き)の妙でもって圧倒してくる感じとでもいいますか。

 

 フェイドインするノイズ音にスラッピング・ベースがかぶさって幕を開ける「暴風波浪警報」(インスト)は、警報音(サイレン?)を模したようなギターの音が面白い……と思っていると次から次へと即興的に高圧フレーズが繰り出されてきましてね。それに即応するリズムセクションとの絡みも楽しい、まさにトリオ形式の醍醐味。

 

 歌ものの「レッド ホット ブルース」は、オーソドックスな12小節ブルーズの構成をとりながら、各所でプレイヤーの妙技を盛り込んできます。内田さんの優し気なヴォイスで“憂鬱(ブルーズ)”を歌うというギャップも良いですね。“♪青い光で月がおいらを照らしてる……お前はどこで何してる?月は見えてるかい……”

 

 ギンギンの電気ギターソングからアコースティックに切り替えての「銀の路」。前作でもそうでしたが、内田さんは「夕刻・夜」を思わせる曲を作るのがお上手ですね。なごんでしまいます。“♪昨日のことは……終わったよ……”

 

 かと思うと、高速ストンピング「ロータリー ストンプ」(インスト)でこっちの目を覚ましにかかりますが。ノンストップのベースがすごい……後半にはギターが裏方に回りベースソロも聴けるくらい。ファニーな小品「チェリー ピンク ブガルー」は、ハンドクラップと“♪Cherry coke!”っていう妙な低音ヴォイスが耳に残っちゃう。

 

 次の「トオン ダウン」はジョン・リー調のブギー。“♪あの、まさか、もしかして……あの、まさか、もしかして……これがあの、うわさの、ブルースってやつかい?”。John Lee Hookerが得意としてたギターフレーズをところどころ確信犯的に盛り込んでくるあたりが嬉しいですね。

 

 さあ、後半。氏永さんのブラシ捌きが素敵なクワイエット・ジャズ歌謡(?)「ゆらゆら」。内田さんの“よく鳴ってくれる”ギターが、ご本人の歌にぴったり寄り添います。“♪ゆらゆらと、ゆれながら……”。

 

 前作『マイ・メロディ』のテーマは「夜」だったんじゃないかと私見では思ってるんですが、今作のテーマは「夏」じゃないでしょうか。「終わりのない夏」なんてのもありますしね。“♪終わりのない夏が……欲しいだけさ……他には何もいらない……”。アコギ+ベース+ドラムのシンプルな演奏が沁み入ります。

 

 アコースティック・ギター一本でしんみり始まる「白い波」は、30秒辺りからはトリオとなって軽快なインストに。ジャジーなテイストの中で、内田さんがいろいろおもしろいフレーズも繰り出します。

 

 そういう曲が続くかと思うと、虚を突いて登場するのが王道ブルーズ・ナンバー。ロバート・ジョンソンからマディ・ウォーターズに継承されたカントリー風味のヘヴィ・ウォーキング・ブルーズ「潮時」。ボトルネックの活用などはマディ流かな。憂歌団『BLUES 1973~1975』から四半世紀経っても、必殺技は必殺技。“♪さようなら……もう行くよ……言ったじゃないか……もうおしまい……さあ行こう……潮時だ……本当に。”歌詞もヘヴィです。

 

 スロウなインスト「遠去かってく景色」も、(前作の時に申し上げたような)内田さんの叙景詩構想力が遺憾なく発揮されたナンバー。3分前後の高揚したアコギ・プレイはグッときます。エンディングに、お得意のアルペジオも登場。(『マイ・メロディ』の「スターダスト」エンディングと聴き比べてください。ほとんど同じ、だと思います……)

 

 ラストの「BC通り」は、沖縄の地名に因んだ曲名ですが、楽曲は沖縄音楽風というよりは、ジャムセッションから生まれたファンク調ジャズといった感じ。インスト。さよう、冒頭の「暴風波浪警報」と対をなす曲なの(ではないかとおもわれるの)だ。ドラムとベースがちょっと引っ掛かりのあるフレーズを反復し、エレクトリックギターが乗っかるのが1分40秒くらいまで。そこからテンポが上がって(リズムパターンも変わる)、疾走しながらのインプロヴィゼイション大会となるのが3分10秒くらいまで。その後また元のパターンに戻って――ただし、個々のプレイは弾みがついちゃってて前半より力感増大――エンディングまで。

 

 オリジナル・アルバムはこれで幕。2006年の再発盤にはボーナス1曲付きだそうですが私は未聴です。内田勘太郎トリオ、焦点もしぼれてていいユニットだったと思うんですが、第二作以降は作られていないようですね。チャンスがあったらまたやっていただきたいものです。

<完>