二枚組の後半へ。
Ace of Cups『ACE OF CUPS』(USA)
CD1
- Introduction: There's A Record Being Made
- Feel Good
- Pretty Boy
- Fantasy 1 & 4
- Circles
- We Can't Go Back Again
- The Well
- Taste of One
- Mama's Love
- Simplicity
- Feel It in the Air
CD2
- Interlude: Transistor
- Stones
- Interlude: Baby from the Forest of Knolls
- Life In Your Hands
- Macushla / Thelina
- As the Rain
- Interlude: Daydreamin'
- On the Road
- Pepper in the Pot
- Interlude: Breath
- Indian Summer
- Grandma's Hands
- Medley:The Hermit/The Flame Still Burns/Gold & Green/Living in the Country
- Outroduction: It's Always Safe ...
- Music
<メンバー>
Denise Kaufman(Ba, Vo, Harmonica)
Mary Ellen Simpson(Gt)
Diane Vitalich(Dr, Perc, Vo)
Mary Gannon(Claps)
+サポート&ゲスト
さて二枚組の2枚目。インタールードが流れてから始まる2-2「Stones」は、オリジナル・メンバーたちによる元気なハード・ロックンロール。このアルバム、録音もいいなあ。ドラムの音がとても活き活き聞こえる。Dan Sheaさんのサポート・オルガンも、Steppenwolfの初期みたいでカッコ良い。
再びインタールードをはさんで、Taj Mahal(Vo)をフィーチュアした「Life in Your Hands」へ。タジさんとメンバーたちによるほとんど歌のみの(厳密にはア・カペラではないのですが)一曲。このあたりから、演出が多彩になってきます。「Macushla / Thelina」は、イーリアン・パイプス(バグ・パイプの一種だそうです)やらハング・ドラムだのを用いた不思議な楽曲。この辺の珍しい楽器を操っているのはDan Sheaさんなんですが、「As the Rain」でもブズーキ他色んな楽器をプレイしていますね。ゲストヴォーカルはPeter Coyote(アメリカの俳優・作家)さん。David Grisman氏のマンドリンも雰囲気あり。
インタールードに、タジ・マハールさんが歌う「Daydreaming’」を置いて、バンジョーやフィドル、ウクレレの活躍するカントリータッチの「On the Road」へ。どうやら二枚目は「ロック」より「米国土着音楽」への探究が著しいみたいです。こういうのは、ランナウェイズやガールスクールじゃ聴けないところですね。Buffy Sainte-Marieさん(Vo)をフィーチュアした「Pepper in the Pot」もカントリーというか特殊なフォークというかそういう味わいですしね。
またもインタールードをはさんで、「Indian Summer」、こちらはアコースティック主体でしんみりと。Ken Emersonさんのドブロが味わい深い。次の「Granma’s Hands」はエレキ・ピアノのサウンドが特徴的で、不思議とキャッチーなヴォーカルナンバー。ハンドクラップの多用が効果的。
そのあとが、9分超えになるメドレー。「The Hermit」はアコースティック・ギターの感じ、笛の入り方など、「Stairway to Heaven」の風味強し……っていうか、あっちが米国フォーク音楽の流儀をうまいこと導入していたというべきなのかもしれませんな。ジミー・ペイジは研究熱心ですから。「The Flame Still Burns」になると今度は、The Who中期の楽曲っぽい感じになる。開放的なコードの感じとかね。Terry Haggertyさんて方がギターソロを弾いてる。そこから今度はThe Beatles(というか。ジョージ・ハリスン)のインド音楽になるのであった(「Gold & Green」)。Norman Mayell氏のシタールやGeoffrey Palmer氏のヴィブラフォンをフィーチュア。最後のパート「Living in the Country」はバンドメンバー中心の、多重ヴォーカルを活かしたロック・ソング。
アウトロを短く入れて、アンコール的に「Music」という(今度こそ)ア・カペラをやって全編の幕を下ろします。
それにしても、なんという密度の濃さでしょうか。“かつてのガールズ・バンド”が思い付きで再集結したのかな、なんてとらえていたことを猛省しました。皆さんのお声こそ若くはないですが、それはそれで別の味があるし、ロックバンドとしての勢いを感じさせる(主に)一枚目、アメリカン音楽の深層を掘り下げていった二枚目と、ゲストも含めてヴェテランの意欲作に脱帽させられました。
<続く>