さて、Jerry Shirleyさんの仕事を見ていく、っていう趣旨からすれば、こういうのも聴いとかないといけませんでしたね。
(3)Syd Barrett『BARRETT』(1970)
- Baby Lemonade
- Love Song
- Dominoes
- It is Obvious
- Rats
- Maisie
- Gogolo Aunt
- Waving My Arms in the Air
- I Never Lied to You
- Wined And Dined
- Wolfpack
- Effervescing Elephant
<メンバー>
Syd Barrett(Vo, Gt)
David Gilmour(Ba)
Richard Wright(Key)
Jerry Shirley(Dr)
Pink Floydのオリジナルメンバー・メインソングライターであったSyd Barrettのソロアルバム(2作目)。ピンク・フロイドとシド・バレットについては、ここで私ごときが説明しきれるものでないので逃げます。とりあえず、本作はシド・バレットが作詞作曲し、ピンク・フロイドのデヴィッド・ギルモアがプロデュースした作品であるということです。キーボードのリチャード・ライトもピンク・フロイドのメンバー。ジェリーのみ外の人ということになりますか……
例えば最初の「Baby Lemonade」ですけども、フォークっぽいというか、中期ビートルズっぽいというか、そういうシドの歌と演奏に、バックが何とかついていって整合性をとろうとしてるようなのが興味深いというかなんというか。ジェリーさん、意外に器用……あ、いや、結構苦しい合わせ方もしてるかな。
次の「Love Song」はまだオーソドックスなリズムで安心……いや、後半ちょっと不思議なところがあるな。まあ、こういう作品は機械じゃ絶対作れない、と思うと嬉しくなるけどね。鍵盤の入り方がやっぱり一時期のビートルズっぽいですかねえ。
「Dominoes」も、伴奏やエフェクト的なサウンドでサイケっぽくなってますけど、ご本人の歌を取りだしたら牧歌的なフォーク調なのかもしれない。あとは歌詞の世界が重要でしょうが、ちょっと深く理解できてない。(なお、この曲はドラムがDavid Gilmourらしいです。)
以下基本的に似た雰囲気になりますか。どなたかがネット上で「アシッド・フォークの名盤といえる」と仰ってましたが、そういう解釈がよいのですかね。(アシッド・フォークっていうのがあんまりよく私わかっていない。)実は先入観で、“シド=狂気のアーティスト”的なイメージを持っていたので、「とても奇天烈な作品では?」と思い込んでいたのですが、それは外れ。意外に聴きやすい。ただし、時々リズムが振れたり揺れたりするところとか、メロディが急に平坦になったり(「Rats」の後半は凄い)するあたりとか、一筋縄でいかないのも確か。まとめづらそうな作品を完成態にもっていったギルモアさんと、鍵盤大活躍のライトさんの貢献は明らかだと思います。
ドラムがちょっと目立つのは「Maisie」ですかね。歌が急に暗い低いトーンになるんですが、その分ドラムとベースがよく聴こえてしまう。やや呪術的な不気味な曲です。その次の「Gigolo Aunt」が急にポップに感じられてしまうくらいにね。淡々と推進力を与える必要がある時には、ジェリーさんに頼め!っていうお手本のようなドラムが聴けるぞ(とか言って、他の人が叩いてたりして……)。
ちょっとKevin Ayersっぽい感じもする「Waving My Arms in the Air」と「I Never Lied to You」は、鍵盤の活躍もあってシンプルながら華麗な仕上がりになってる。個人的にはこの辺が好きかな。「Wined and Dined」もいいね。ドラムはほとんど出てこないけど。
「Wolfpack」は後半の器楽重ね(少し遠くでギターが鳴ってるような演出も)がインパクトあり。ラストはチューバがフィーチュアされた牧歌的――というにはなんか変な歌詞みたいだけど――な「Effevescing Elephant」でおしまい。
<続く>