(2)Humble Pie『THE BEST OF HUMBLE PIE: 20th Century Masters』(2000)
- Natural Born Woman
- Big Black Dog
- Stone Cold Fever
- Shine On
- Rolling Stone
- Four Day Creep
- C’mon Everybody
- Hot ‘N’ Nasty
- 30 Days in the Hole
- Black Coffee
- Ninety-Nine Pounds
- I Don’t Need No Doctor
<メンバー>
Steve Marriott(Vo, Gt)
Peter Frampton(Gt, Vo)#1~6,12
Clem Clempson(Gt, Vo)#7~11
Greg Ridley(Ba, Vo)
Jerry Shirley(Dr)
Humble Pieのスタジオ作品も鑑賞しとこうと思うのですが、一枚に絞ることが出来なかったので、お手軽ながらベスト盤でいきます。選曲がいいので。なお、ピーター在籍時が前期、クレム在籍時が後期の作品と思っていただければ大丈夫です。
「Natural Born Woman」(または「Natural Born Bugie」、どちらが正式なのかわからない……)は、最初期のシングル。私が最初に手を出したベスト盤――これとは別なんですが――でも冒頭に収まってまして、ハンブル・パイと私の最初の出会いがこれだったので特に印象に残っております。構成としてはオーソドックスなブルーズ・ブギーなんですが、漢気あるグレッグ・ヴォイスで一番を始め、二番でピーターが引き継ぎ、間奏はさんで三番で満を持してスティーヴ登場……っていう流れは、さよう、「Four Day Creep」で繰り返される十八番の手法でございます。あとね、淡々としてるけど、フレーズごとに過不及無い適切なフィルを入れるジェリーのドラムが最高なのよ。8ビートマスターというのはこういう方を言うのであろう。あ、この曲はSteve Marriott作です。
「Big Black Dog」もシングル曲。こちらはPeter Frampton作。全編のパウンディング・ベース、2番での太い歌唱など、グレッグの見せ場が多めかな。ジェリーの太鼓は流石の安定感。“ドドッタッドタッ”っていうキックとスネアのコンビネーションが決まるんで心地よいのなんの。
「Stone Cold Fever」は、ライヴ版を御紹介しましたね。こちらでは、ヴォーカルにほんのりエフェクトが掛かっているのかな。1分辺りのところではハーモニカも聴こえます。中間のジャジー・パートも本格的。
「Shine On」は、シングルでも出た、『ROCK ON』冒頭を飾るピーター作品。全編歌うのはピーターで、鍵盤もフィーチュアされますので、この曲はむしろ後のPeter Framptonソロ作品に近いかも。じっさい、彼は名盤ライヴ『FRAMPTON COMES ALIVE!』でもセルフ・カヴァー(?)しております。
「Rollin’ Stone」もライヴ版については申し上げました。スタジオ版もあって、『ROCK ON』に入っています。こちらは6分の長さ。終盤に怒涛のブギーに突入するところが強引でイイ。ジェリーさんも張り切ります。……それにしても、前曲と本曲ではだいぶカラーが違いますね。ピーターとスティーヴの志向がはっきり分かれてきたという感じもします。
「Four Day Creep」は『PERFORMANCE』のヴァージョン。前回記事をご覧下さい。
さて、ピーターの脱退後、Humble Pieは後任にDave ‘Clem’ Clempsonを迎えます。BakerlooやColosseumなどで活躍した、英国ブルーズ・ロック界の名職人。(なお、私はBakerlooはHumble Pieより後に知ったんですけどね……。)その彼がスティーヴのR&B・ソウル志向に合うのかなと思し召しかもしれませんが、しっかりフィットするんですねこれが。それも、セッションプレイヤー的な位置じゃなくて。
〔筆者が初めてHumble Pieを聴いたベスト盤『HOT ’N’ NASTY: The Anthology』〕
じゃあ、聴きましょう。「C’mon Everybody」は、言わずと知れたEddie Cochranの代表曲の一つ。(英国だとUFOもカヴァーしましたね。)Humble Pie『SMOKIN’』で聴けますが、ライヴ録りっぽい生々しい感じがありまして(特に終盤にかけて熱くなる)、ドラムも伸び伸びプレイされてます。渋くてツボをおさえたギターフレーズはさすがクレムさんという感じですが、同時にいままであまり気に留めていなかったスティーヴのリズム・ワークにも耳が行きます。
「Hot’n’Nasty」は『SMOKIN’』の一曲目を飾ったスティーヴ作。カウベル付きの軽快なリズムから始まり、鍵盤込みで中盤から疾走。オルガン弾いてるのはゲストのStephen Stillsさんですな。ファンキーでキャッチーで、シンプルな8ビートの楽しさを満喫できる、コンパクトな一曲です。
「30 Days in the Hole」もスティーヴ作。シングルカットされ、『SMOKIN’』収録もされました。冒頭から見事なコーラスワーク“♪Thirty days in the hole……”で幕を開け、ジェリーのドラムに支えられてギターとベースが躍動するロックナンバー。この太鼓の音色は、80年代以降モノでは絶対(言い過ぎ?)聴けない感じのやつだね。
sus4(?)を多用したようなギターリフ作りは、スティーヴによるものでしょうか。むかし、The Blue Heartsをよく聴いてたんですが、のちにThe Jamなんかを聴くようになって「ギターワークはこの辺に手本があったのかなあ」などと勘繰ったものでしたが、考えてみればKeith RichardsにしろSteve Marriottにしろ、60年代英国ロッカーはああいう音をよく出してましたね。
「30 Days in the Hole」は、カヴァーもよくされているようですが、私にとって印象的なのはMr.Bigかな。ライヴ盤『LIVE』で聴けますし、Youtube上には動画もあるよ(故Pat Torpeyのドラムもやっぱり良い)。彼らはThe Who「Baba O’Riley」もやったりと、ブリティッシュ・ロック好きだよね……っていうか、バンド名じたいFreeから来てましたわね。
次の「Black Coffee」はIke & Tina Turnerのナンバー。Tina Turnerの物凄い歌唱をどうカヴァーするのかと思ったら、割と忠実に歌ってますねスティーヴ。こんな芸当ができる男性シンガーは滅多にいないでしょうなあ。Humble Pie『EAT IT』に入っています。この曲は、英国の音楽番組(OGWT)に出演した、当時のハンブル・パイの演奏がYoutubeで観られるので、ぜひご覧下さい。女声コーラス隊(The Blackberries)を率いてノリノリで歌うスティーヴ、スライドギターを決めるクレム、マジカルなファンクネスを生み出すグレッグが観られます。カメラのアングルのせいで、ジェリーさんがほとんど見えないのは残念ですが。
「Ninety-Nine Pounds」は、『THUNDERBOX』という彼らのアルバムに入っていた、いかにも彼ららしいシンプルな8ビートロックンロール。といっても、これもカヴァー曲ですが。Ann Peeblesさんの曲を、ちょっとテンポを上げて演奏してるんですね。
本ベスト盤のラストに「I Don’t Need No Doctor」を持ってくるあたりに(ここだけ時系列じゃないので)、このコンピの編者のこだわりを感じますな。「パイはこの曲で締めないと!」っていうことでしょう。同感であります。
<続く>