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"Fashist an di attack ,den wi countah-attack......"<Linton Kwesi Johnson>

特集:このドラミングがすごい③Jerry Shirley(1)

<達人の物語>

 ドラマーの話はしょっちゅうしていますが、特集は久しぶりですね。

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 所謂テクニカル・ドラマーも私は好きなんですが、最近とみに「良いなあ」と思うのが“8ビート”に味のある人たち。当ブログでもなんだかんだでPhil Rudd(AC/DC)・Simon Kirke(FreeBad Company)・Denny Carmassi(MontroseGamma)・Terry Chambers(XTCTC&I)ほかの8ビート・マスターたちに触れてきましたが、この人も忘れちゃいけないやって思い出したのがJerry Shirleyさん。

 

 Shirleyさんについては、Peter Framptonさんの話をしたときに(第17回「Peter Frampton」(4))名前が出てきたんですが、それっきりになっていました。この伝説的バンドHumble Pieだけでなく、セッション的な仕事も、私の手元にある限りで挙げてみたいと思います。

 

 1952年生まれのシャーリーさんは、早くからドラムをプレイしていたといいますが、世に出たのはSteve MarriottたちのHumble Pieに加わってから。当時17歳!……そうか、私が感銘を受けた「Natural Born Woman」なんかは、十代のプレイだったんですよね。Humble Pieっていうとスティーヴのバンド、というイメージがつよいと思いますし、楽曲やパフォーマンスに関しては確かにそうなんですが、バンドの暖簾を守っているのは実はシャーリーさんだったりするんですね。彼のみが――スティーヴや、ベースのGreg Ridleyが亡くなってしまったというのもありますが――ハンブル・パイにずっと居るのです。

 

 当ブログ第17回(4)で挙げたうちの『ONE MORE TIME FOR THE OL’ TOSSER: Steve Marriott Memorial Concert/London Astoria 2001』は、タイトル通りスティーヴ・マリオットへの追悼コンサートの記録でして、Paul WellerだのNoel Gallagherだのといった“若手”(?)ゲストのほかに、Ian McLaganやKenney Jonesといった元同僚なんかも顔をそろえた会合だったのですが、ここにHumble Pieも登場(CD3枚組のうち2枚目)。Peter Frampton+Clem Clempson+Greg Ridley+Jerry Shirleyという、黄金のパイを支えた面々が「Four Day Creep」「Natural Born Bugie」「Hallelujah I Love Her So」「Shine On」「I Don’t Need No Doctor」を披露しました。(何曲かは、Youtubeでも観られるようです。)

 

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 野太く漢らしいGregのヴォーカルでスタートする「Four Day Creep」は、亡きSteveのパートはClemさんが歌います。Peterのクールなソロも健在。Jerryさんも、“切れ味鋭い”とはいえませんが、円熟味を増したグルーヴを叩き出します。

 

 お次は、初期の名曲(ながら、あまりライヴ記録が残っていない)「Natural Born Bugie」。眼鏡をかけたジェリーさんが淡々と8ビートを推進するのが渋くてカッコいい。この曲はクレムさんのソロが先攻、さすがの腕前に惚れ惚れ。終始ニコニコしてるピーターさんがキュート……だけど、終盤ではきっちりお得意のソロを決めます。

 

 Ray Charlesのナンバーで、スティーヴも好んでいた「Hallelujah I Love Her So」。これもやらないわけにいかないでしょうね。この曲、The AnimalsThe BeatlesGraham Bondなんかもカヴァーしてまして(これらは手元にありました)、ビートロック風ありジャジースウィング調ありなんですが、Humble Pie版がやっぱり一番ハードですね。この追悼ヴァージョンでは、終盤でピーターがトーキングモジュレータを使って聴衆とのコール&レスポンスを楽しんでます。

 

 次に、ピーター色の強い「Shine On」。Peter Framptonのソロライヴ・ヴァージョンより気持ちヘヴィでしょうか。グレッグのベースが「重い」のかも。この曲もあまりライヴで演じられたことはなかったはず。

 

 最後は「I Don’t Need No Doctor」、これまたスティーヴが大好きだった曲。弦楽器のユニゾンによるリフがヘヴィな疾走感を醸し出す名曲。スティーヴの声が無いぶんはみんなでフォローしますが、特に現役感バリバリのピーターの頑張りが素晴らしい。ベースソロあり、ギターバトルあり、観客への煽りありで大盛り上がり。そのすべての基礎は名手ジェリーさんによるものですよ。

 

 あれ、気が付いたらひと作品取り上げちゃってました。

 

 ジェリーさんは80年代にはFastwayWaystedといったハードロックバンドにも加わりますが、その後90年代以降は再編成Humble Pieの中心となって活躍しています。上のリユニオンに至るまでハンブル・パイを守ったのがジェリー・シャーリーさんだったのです。

 

 これらに加え、70年代から彼は各種セッションワークもこなしていまして、「え、これってジェリーさんのプレイ?」ってあとから気づかされることもあったりするのね。今回の特集は、Humble Pieでのプレイだけでなく、セッションワークもちょっと挙げてみたいと思います。

<続く>