③Riot『FIRE DOWN UNDER』1981
- Swords & Tequila
- Fire Down Under
- Feel the Same
- Outlaw
- Don’t Bring Me Down
- Don’t Hold Back
- Altar of the King
- No Lies
- Run for Your Life
- Flashbacks
<メンバー>
Mark Reale(Gt)
Guy Speranza(Vo)
Rick Ventura(Gt)
Sandy Slavin(Dr)
Kip Leming(Ba)
たぶん、欧米で一番有名なRiotのアルバムはコレだったんじゃないでしょうか。メジャーのエレクトラから出て、1981年という段階にしてはトンがった音を提示していましたので。(レコード会社は当初“こりゃあ攻撃的すぎて売りにくい”とイチャモンを付けたらしい)実際、このアルバムが好きだっていう同業者はけっこう多いみたい。例えばTNTのTony Harnellは、まだTNTに加入するよりずっと前これを聴いて感銘を受けたって言ってましたしね。後にMark Realeと双頭でWestworldをやった時、ライヴで数曲歌ったわけです。Marty Friedmanさん、大橋隆志さん、故hideさんなど、初期Riotが好き(だった)というギタリストも多し。『THUNDERSTEEL』が出て、メロパワ世代が成長してからは「パワーメタルRiot」の支持も高まりますが、Riotの名盤!というとまずは本作あたりなんでしょう。
リズムセクションが交替となっていまして、デビュー以前からマークとともにあったPeter Bitelliが脱退してSandy Slavinに替わり、ベースもKip Lemingにチェンジしています。後に発売されるライヴアルバムなどを聴くと、『NARITA』発売後の海外ツアー(英国公演)の時点でメンバーチェンジは生じていたようです。ニューヨーク・ローカルからワールドワイドへ移るタイミングで面子が替わったのでしょうね。(力量の問題というより、おそらくライフスタイルの問題と思われます。PeterもGuyも、ワイルドなロックンロールライフやツアー生活は好まなかったといいますので……
さて、作品冒頭の「Swords &Tequila」は、リフのタイプこそMSG「Armed and Ready」に似てなくもないですが、歌詞の世界観から何からやっぱりRiotにしか出来ない英米折衷ハードロック。Mark Realeが珍しくアーミングを披露していたりっていう聴き所もありますが、力感溢れるGuyの歌がやっぱりイイ。新加入のSandy&Kipの突進力あるプレイも合ってます。
そのKipは早速楽曲に貢献したみたいなんですが、次の「Fire Down Under」というタイトルトラックは、当時としてはなかなかのスピードナンバー。(Kipが作曲に関与した曲はこういうのが多くて、次作の「Violent Crimes」も速かった。)構成は単純な部類に入るんですが。数年前にRiot Vとして初来日したときの彼らがコレをやった時はビックリしましたなあ。凄くよかったけど。
「Feel the Same」はもう一方のギタリストRick Venturaによる、些かあやしい雰囲気のミドルナンバー。Reale/SperanzaのナンバーがRiotのコアであることは間違いないんですけど、時々無性にこの異個性のRickナンバーを聴きたくなるんだよね。ギターソロはRickで、Mark以上にブルージーなフィーリングで勝負、ってところ。
次の「Outlaw」は後にラインナップが変わってからもよく取り上げられたので、有名かもしれない。これまた米国西部史をモチーフにしたような十八番のハードロック。ディレイ(?)を掛けたギターリフも個性的なら、ビッグな歌メロも印象的な、やっぱり名曲。後年、自分達(メンバーはMark以外は違いますが、『NIGHTBREAKER』)でセルフカヴァーもします。
比較的ストレートな「Don’t Bring Me Down」。ちょっと個性に乏しいかも?という気がしますが、ギターソロのところでテンポを落としてくるあたりは嫌いじゃない。2分あたりのところとかね。
細かいビートの刻みと朗々としてメロディアスな歌が組み合わされた「Don’t Hold Back」は、本人たちも気に入っていた様子。ライヴでの演奏例もあります。“♪Don’t hold back!”っていうところは、メンバー全員+Steve Loebがコーラス・シャウトしてるんだって。
「Swords & Tequila」「Outlaw」に続いて重要なのはこの「Altar of the King」でしょうか。冒頭に物悲しいギター演奏パートが置かれ、幕を開けると、1分25秒あたりから、ミッド・シャッフルで本編の展開。別段捻ったコード進行ではないのですが、Guyの歌いっぷりがちょっと個性的。ブリッジに当たる部分のギター+ドラムの刻みが古風ながら素敵なのを味わっていると、Markによる素晴らしすぎるギターソロがいらっしゃる。速弾きの類は無し、ひたすらメロディアスなばかりですが、絶妙なヴィブラートがあまりに見事なのである。最近のインタビューでMike Flyntzは「マークのヴィブラートを聴いてくれよ。彼は過小評価されてきたギタリストだけど、あのヴィブラートを聴けば、すぐに彼ってわかるだろ。ブライアン・メイ、マイケル・シェンカーと肩を並べる存在だよ」と言ってました。まさに同感です。
ここでまた少し毛色の違うナンバー。「No Lies」はRick作のメジャー調作品で、Sandyのドラムパターンもちょっと面白い。(忙しそうだけど。)2分40秒辺りからのギターソロも、テクニカルさはないですがちょっと面白い。3分20秒辺りからの後奏ギターソロもいいです。
「Run for Your Life」は突進力勝負の疾走ナンバー。ギターソロ裏のベースのランも単純だけどカッコいい。ソロ明けにあたる2分ちょうど位のリフ・パターンも好き……ですが、全体としては少し単調かもしれない。Riotのおもしろい(ヘンな?)ところは、バンド内に同名異曲があることなんですが、後に『THUNDERSTEEL』に「Run for Your Life」という全く名前は同じで全然違う曲を入れてるんですよね。
最後の「Flashbacks」は、楽曲というよりは、弾きまくりのギターサウンドに、歴代のライヴ・MC音源を重ねて作ったコラージュ作品。2分20秒くらいからは疾走する8ビートのバンドサウンドがベースになるので聴くやすくなります。まあ、コレだけ聴いても「何のことやら」なんですが、観衆の“Riot ! Riot !”の呼び声やGuyの煽りMC“London, do you rock?”が絶妙に挿入されるんで意外に捨てがたい。なお、このアルバムをもってGuy Speranzaはバンドを離れてしまいますので、そういう意味でも何だか感慨深いエンディング。
<『FIRE DOWN UNDER』完、特集は続く>