DON'T PASS MUSIC BY

"Fashist an di attack ,den wi countah-attack......"<Linton Kwesi Johnson>

どんぱす今日の御膳201

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Status Quo「Bad News」(『IN SEARCH OF THE FOURTH CHORD』2007)

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 英国のブギー大使Status Quoは、私なんぞが四の五の言うまでもなく素晴らしいわけですが……

 

 英国ハードロックのディスクガイド片手にアルバム・チェックし出した私の様な完全後追い組からしますと、「まずは1970年代の偉業をたどらないと」という意識が先に走って、しばしば80年代以降を「ポップになっちゃったんじゃない?」で軽んじがちなのですが、それは大きな間違いでありました。

 たとえばこれ、ジャケはハリウッド映画もどきのチープな絵(味わいがあって好きだけど)、タイトルはムーディー・ブルースThe Moody Bluesのパロディかい?ってなもんであまり期待しないで再生したんですが……おろかものめといわれてもいいかえせない、さすがのロック・アルバムが待ち構えておりました。

 たとえばこの「Bad News」のノリ、こんなのもう出せる人たち、他にいないんじゃないの?Rick Parfittのリスト(wrist)がはじき出すリフの強靭・しなやかなことはどうよ。(別に私が威張ることではないのですが。)

 

 アルバムを通して聴いてみてください。このハード寄りの曲にしても、もっとソフトなポップな曲にしても、どこから聴いても「クオ味」になっているのは本当にすごい、のです。

どんぱす今日の御膳200

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Harvey Mandel「Ode To The Owl」(『THE SNAKE』1972)

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 The Rolling Stones『BLACK AND BLUE』への参加が有名なギタリストHarvey Mandel先生。私にとっては“Canned Heatのリード・ギタリスト”(Henry Vestineと交互で)というイメージなんですが、この人の70年代のソロ・アルバムはなかなかスゴイ。

 

 といっても私は自分で発見したのではなく、ブルーズ・ロックについてのディスクガイドで知ったのですが。ある本の中でマッド矢野氏がかなりマニアックかつ熱量のある解説を書かれていたんで、「じゃあ何とか聴いてみないと」という風に思った次第です。

 最初はたしか『RIGHTEOUS』(1969)・『GAMES GUITARS PLAY』(1969)の2in1CDを見つけて聴きました。Hunble Pieが好んで演った「I Don't Need No Doctor」をこの人もやってるなあ、などとは思いましたが、実は当初はこの人の凄さ・面白さはわかっていませんでしたね。

 

 そんなわけでだいぶたってから、『THE SNAKE』(1972)にたどり着いたのでした。the snakeっていうのはキャンド・ヒート時代の彼の“ニックネーム”なんですけど、何だろう、うねうねしたギターフレーズを使いこなすからなんですかね?因みに、Bob Hiteさんは巨漢で“the bear”、ベースのLarry Taylorさん(前回ふれたメル・テイラーさんの弟ぎみ)は“the mole(もぐら)”ってな具合で、ヒートの面々は可愛いやら怖いやら。

                     

 ブルーズ・スワンプロック・フォーク・ジャズのどれにも似ていない(ORどの要素も少しずつある)個性的なアルバム『THE SNAKE』の中に、今回の「Ode To The Owl」というインストゥルメンタルが入っています。カントリー・フォーク風味のあるギター独奏で、リズム感のキレが凄いグルーヴィな曲なんですが、これは“ode(オード、頌歌)”で、「フクロウのための頌歌」だというんですね。

 

 “the owl”というのは、キャンド・ヒート創立者でありギタリスト・ハーピスト・ヴォーカリストであったAlan Wilson(こちらはあのベンチャーズのDon Wilsonの弟さん)の“ニックネーム”。つまり、数年前に亡くなったかつてのバンドメイト、アラン・ウィルソンに捧げられた楽曲と思しいわけです。歌詞もありませんし、しみじみとした追悼の曲でもないのですが、米国音楽(ルーツ・ミュージックっていうんですか?)にきわめて造詣の深かったウィルソン氏に同格の名工マンデル氏が捧げた曲と考えると納得の、ディープな一曲。あっさり短いけどね。

 

 最近読んだジーン・シモンズ著(森田義信訳)『才能のあるヤツはなぜ27歳で死んでしまうのか?』星海社新書)という本の中に、アラン・ウィルソンのことも取り上げられていたので、この曲のこともふと思い出しました。なお、ハーヴィー・マンデルさんはまだまだご健在で、Canned Heatでもプレイしておられるようです。

どんぱす今日の御膳199

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Mel Taylor And The Magics「Bongo Rock」(『IN ACTION』1966)

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 今年(2022年)は、The Venturesのオリジナル・メンバーDon Wilsonが亡くなりましたね。私はリアルタイムでベンチャーズの衝撃を受けた世代ではありませんが、日本の地方都市にまめに公演に来てくれた彼らを実際に観たこともありましたし、ローカル・コピーバンドベンチャーズの楽曲を相当数演奏したこともありまして、馴染みはある方だと思っています。

 

 地元の市民会館(?)にやってきたベンチャーズを観たのが、たぶん“(バンドの)ライヴ”鑑賞初体験であったと思います。1990年代後半。当時のメンバーは、Don Wilson+Bob Bogle+Gerry McGee+Mel Taylorでした。ドンさんやメルさんが、後に私がハマりまくるブルーズ・バンドCanned HeatAlan Wilson・Larry Taylorのそれぞれお兄さんだとはもちろん知らぬころ。

 

 ドン・ウィルソンさんはとにかくニコニコしていて、歌も歌ったり(「Runaway(悲しき街角)」だったかな)してましたね。例のいわゆる“テケテケ”もライヴだと大盤振る舞いだったように記憶します。

 

 それと、やはり印象に残ったのはメル・テイラーさんですね。中学でバンドの真似事をはじめていた私(ドラム)からすると、あらゆるプレイがお手本でしたが、当時はやはり派手な演出に心惹かれました。定位置(ドラムスツール)から徐々に離れ、ベースと協業で打弦する「Caravan」の拡張版……ドラムって自由でもあるんだなあと思ったはず。

 

 当時の彼らの最新作WILD AGAIN(1997)もCDを買って(厳密には親に頼んで買ってもらって)愛聴しました。たしかステージでもやっていた「Ajoen, Ajoen」(邦題:心のときめき)なんかが好きでしたね。

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 その後しばらくしてメルさんは亡くなりましたので、ほぼ最晩年のステージを観たことになりますか。で、つい最近までほとんど注意していなかったのですが、メル・テイラーにはソロ名義の音源もあったのですね。中古店でMel Taylor & The Magics『IN ACTION』なる作品を見かけ、気になってチェックしてみると、1966年の作品であると。「Drums A-Go-Go」「Watermelon Man」「A Taste Of Honey」などといった興味深い楽曲の中に、The VenturesWILD AGAINにも入っていた――というか、後に再演することになる、というべきでしょうか――「Bongo Rock」も含まれておりました。

 

 オリジナルは1959年にリリースされたPreston Eppsの曲。そして、The Surfaris「Wipe Out」の元ネタにもなったのだそうですね。(私はベンチャーズ経由で「ワイプ・アウト」を見聴きした人間ですが。)ボンゴの乱打がよい感じ。

どんぱす今日の御膳198

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Little Richard「Open Up The Red Sea [Bonus Track]」(『KING OF ROCK AND ROLL』[再発]2020)

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 リトル・リチャード、彼のピアニストとしての腕前はまだまだかえりみられていないのではないでしょうか?ヴォーカリストとして凄すぎるせいかもしれませんが。例えばJerry Lee Lewis(彼もロックンロールの偉人ですけど)は“ピアノの前にいる”姿がイメージで浮かびますけど、Little Richardの場合は“シャウトしてる顔のアップ”とかが多いような。

 

 この「Open Up The Red Sea」という曲、私は最近再発されたヴァージョンの『KING OF ROCK AND ROLL』のボーナスとして初めて聴きました。2000年代前半にすでに世に出ていた音源ではあったそうですが。作曲者は不明(クレジットが無い)ですが、“ご機嫌なロックンロール”、インストゥルメンタルです。

 

“♪Open up the red sea!”と一声かけたあとチャック・ベリーの必殺フレーズをピアノに置き換えたモノから全編ピアノを弾き倒す……というか叩きまくる――ピアノは打楽器!――リトル・リチャードが異様にカッコいい。ドラムやサックスもバックアップとしてはよいですが、陰の主役はベースかな。これ、誰のプレイなんでしょう、凄いんだが。

 なお、作品本編『KING OF ROCK AND ROLL』(1971)も私は好きです。“♪Now I’m gonna sing and shout it, there ain’t no doubt about it, I’m the king of rock and roll……”なんていう歌詞を歌って許されるのはリトル・リチャードだけでしょうよ!「Joy To The World」だの「Brown Sugar」だのといった“ひとの曲”もおのれのものにしてしまう力技も堪らん。

どんぱす今日の御膳197

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Faith And Fire「Fallen (Rehearsal)」(『ACCELERATOR』[再発]2021)

 RiotのMike FlyntzとTony Mooreを擁したバンドFaith And Fireについては当ブログ「第37回」第37回「Faith And Fire」(2)ですでにご紹介しました。あのバンドはもう完結したので続報は無いと思っていたのですが、なぜか昨年(2021年)唯一作『ACCELERATOR』(2007)が大量のボーナストラック付きで再発されました。Riot信者としてはチェックせぬわけにいかず……専門店でこの2枚組を入手いたしました。

 

 作品は大きく3種類の音源に分けられそうです。

(1)まず、本編ですね、これは当然。但し、私がリリース当時にゲットしたオリジナル盤とは一部の曲順が異なっておりました。

※☟こちらは「本編」から「Radio Superstar」

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(2)ボーナスのメインは「デモ」ヴァージョン。未発表曲を含む15ものテイクが収録されています。

(3)さらなるお宝が「Rehearsal」テイク。5曲のスタジオ・リハーサルが聴けます。

 「デモ」の多くは歌入り・ギター入りですが、リズム(少なくともドラム)は打ち込みのようでした。トニーのヴォーカルやマイクのギターは割と早いうちに組み立てられていた様子がうかがえますね。リズム・パターンは完成版とさほど変わりませんが、やはりダイナミズムに乏しい。ここはJohn Miceliさんの生ドラムに置き換わった完成版と聴き比べて下さい。「人力生ドラム、それも名手によるものは、最高だ!」とわかりますので。

 

 個人的には「リハーサル」音源がめちゃくちゃ嬉しい。このバンドはアルバムを発表しましたが、ライヴ活動はしなかった(筈な)ので。(何と言ってもリズム・セクションが多忙な人達ですから仕方なかったんでしょうけども。)

 

 そんな彼らが、ちゃんと顔を突き合わせて「一緒に演奏した様子」(要はスタジオライヴですな)が聴けるというのは、ありがたいというしかない。音質こそ(おそらく記録用だったのでしょうから)それなりですが、その分手直し無しで生々しいのですね。

 さっきの「デモ」と比べて、やっぱり生ドラムが入ると活き活きするなあ――繰り返しますが、ミセーリさんのドラミングは素晴らしいです!――というのがまずあります。スタジオライヴですからギターが一本になりますが、マイク・フリンツさんはすごくきっちりした人ですからバッキングからソロまで隙無くカヴァー。後に一時期(Mark Realeが病欠した際)Riotのステージをシングル・ギターにて支えることになる、片鱗をすでに見せております。Danny Miranda氏のベースは音源では少し引っ込んでいますが、やはり躍動感がある。トニーのヴォーカルも往年のRiot時代を思い出させる力の入ったもの。

――といいつつ、こんな名手名工揃いでも“ミス”はあるんだなあなんていうのも楽しみだったりして。歌い続けでしんどかったのか、ところどころトニー・ムーア氏の声が裏返ってしまっていたり。珍しく構成を間違えてマイクとダニーが別のコードを弾いちゃってたり。ドラマーの鑑、ジョン・ミセーリ先生だけはほぼ完璧(だと思う)!誰が戸惑ってもドラマーだけは楽曲を把握していなければならんという基本を再確認した次第。

 そういう場面も含めて、ハードロック・ファンには堪らぬお宝音源なのでありました。