最初はたしか『RIGHTEOUS』(1969)・『GAMES GUITARS PLAY』(1969)の2in1CDを見つけて聴きました。Hunble Pieが好んで演った「I Don't Need No Doctor」をこの人もやってるなあ、などとは思いましたが、実は当初はこの人の凄さ・面白さはわかっていませんでしたね。
ブルーズ・スワンプロック・フォーク・ジャズのどれにも似ていない(ORどの要素も少しずつある)個性的なアルバム『THE SNAKE』の中に、今回の「Ode To The Owl」というインストゥルメンタルが入っています。カントリー・フォーク風味のあるギター独奏で、リズム感のキレが凄いグルーヴィな曲なんですが、これは“ode(オード、頌歌)”で、「フクロウのための頌歌」だというんですね。
“the owl”というのは、キャンド・ヒートの創立者でありギタリスト・ハーピスト・ヴォーカリストであったAlan Wilson(こちらはあのベンチャーズのDon Wilsonの弟さん)の“ニックネーム”。つまり、数年前に亡くなったかつてのバンドメイト、アラン・ウィルソンに捧げられた楽曲と思しいわけです。歌詞もありませんし、しみじみとした追悼の曲でもないのですが、米国音楽(ルーツ・ミュージックっていうんですか?)にきわめて造詣の深かったウィルソン氏に同格の名工マンデル氏が捧げた曲と考えると納得の、ディープな一曲。あっさり短いけどね。
その後しばらくしてメルさんは亡くなりましたので、ほぼ最晩年のステージを観たことになりますか。で、つい最近までほとんど注意していなかったのですが、メル・テイラーにはソロ名義の音源もあったのですね。中古店でMel Taylor & The Magics『IN ACTION』なる作品を見かけ、気になってチェックしてみると、1966年の作品であると。「Drums A-Go-Go」「Watermelon Man」「A Taste Of Honey」などといった興味深い楽曲の中に、The Ventures『WILD AGAIN』にも入っていた――というか、後に再演することになる、というべきでしょうか――「Bongo Rock」も含まれておりました。
リトル・リチャード、彼のピアニストとしての腕前はまだまだかえりみられていないのではないでしょうか?ヴォーカリストとして凄すぎるせいかもしれませんが。例えばJerry Lee Lewis(彼もロックンロールの偉人ですけど)は“ピアノの前にいる”姿がイメージで浮かびますけど、Little Richardの場合は“シャウトしてる顔のアップ”とかが多いような。
この「Open Up The Red Sea」という曲、私は最近再発されたヴァージョンの『KING OF ROCK AND ROLL』のボーナスとして初めて聴きました。2000年代前半にすでに世に出ていた音源ではあったそうですが。作曲者は不明(クレジットが無い)ですが、“ご機嫌なロックンロール”、インストゥルメンタルです。
“♪Open up the red sea!”と一声かけたあとチャック・ベリーの必殺フレーズをピアノに置き換えたモノから全編ピアノを弾き倒す……というか叩きまくる――ピアノは打楽器!――リトル・リチャードが異様にカッコいい。ドラムやサックスもバックアップとしてはよいですが、陰の主役はベースかな。これ、誰のプレイなんでしょう、凄いんだが。
なお、作品本編『KING OF ROCK AND ROLL』(1971)も私は好きです。“♪Now I’m gonna sing and shout it, there ain’t no doubt about it, I’m the king of rock and roll……”なんていう歌詞を歌って許されるのはリトル・リチャードだけでしょうよ!「Joy To The World」だの「Brown Sugar」だのといった“ひとの曲”もおのれのものにしてしまう力技も堪らん。
Faith And Fire「Fallen (Rehearsal)」(『ACCELERATOR』[再発]2021)
RiotのMike FlyntzとTony Mooreを擁したバンドFaith And Fireについては当ブログ「第37回」第37回「Faith And Fire」(2)ですでにご紹介しました。あのバンドはもう完結したので続報は無いと思っていたのですが、なぜか昨年(2021年)唯一作『ACCELERATOR』(2007)が大量のボーナストラック付きで再発されました。Riot信者としてはチェックせぬわけにいかず……専門店でこの2枚組を入手いたしました。